異波長重畳レーザビームと物質間の量子的・熱的相互作用

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10305055
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 松縄 朗 大阪大学, 接合科学研究所, 教授 (20029119)
• 研究分担者: 竹本 正 大阪大学, 先端科学技術共同研究センター, 教授 (60093431) ; 片山 聖二 大阪大学, 接合科学研究所, 助教授 (10144528)
• キーワード: レーザ / 異波長 / ハイブリッド化 / ビーム吸収率向上 / 母材溶融特性 / キーホール挙動 / レーザ溶接 / ポロシティ

研究概要

平成13年度は「異波長重畳レーザ加工現象の物理学的解明とキーホール挙動観察による欠陥発生機構の解明および防止策の開発」と「高反射材料のレーザマイクロ加工現象の解明」を主として遂行した。それらの概要を以下に記す。
1.異波長重畳レーザ加工現象の物理学的解明とキーホール挙動観察による欠陥発生機構の解明および防止策の開発
当初、マイクロフォーカスX線透視法により矩形波パルスYAGレーザ溶接中のキーホール挙動の観察を試みた結果、ポロシティ発生はパルス終了時のキーホールの崩壊によることを解明した、これを解消するためには、パルス終了時の波形を適正に制御することが最も効果があることを確認した。また、スパッタリングはパルス初期に入射パワーの立ち上がりが早いと生じることが判明し、パルス波形を徐々に増加させることにより解消できることを明らかにした。さらに、異波長重畳レーザ溶接中の基本波YAGレーザ光の反射光測定と高速ビデオによる溶接現象観察を行った結果、第2高調波の重畳によりキーホールが安定化し欠陥防止に効果的であることを明らかにした。
2.高反射材料のレーザマイクロ加工現象の解明
昨年度までの研究によって、異波長重畳レーザ溶接の効果はとくに反射率の高い純銅や純アルミニウムに効果が高いことが判明している。本年度は、各種材料の極薄板(0.1mm以下)の重ね溶接を行った。基本波パルスレーザの単独照射では重ね溶接が不可能であったが、第2高調波を重畳照射することにより重ね溶接の可能条件範囲が拡大することおよび十分な継ぎ手強度を有することを確認した。さらに、純銅の極薄板の重ね溶接においては、アルゴンシールド条件では溶接条件範囲が極めて狭くなるが、空気中での溶接では良好な結果を得られることを確認した。また、空気中での溶接では表面部が酸化されるが、溶接金属中には酸素の濃化が起こらず、継ぎ手の電気伝導度に全く悪影響を与えないことを明らかにした。

研究成果

• [文献書誌] 瀬渡直樹, 片山聖二, 松縄 朗: "アルミニウム合金レーザ溶接時のポロシティ生成機構の解明とその抑制法"溶接学会論文集. Vol.18、No.2. 243-255 (2000)
• [文献書誌] 瀬戸直樹, 片山聖一, 松縄 朗: "ステンレス鋼CO_2レーザ溶接時のポロシティ生成機構の解明と低減法"溶接学会論文集. Vol.19, No.4. 600-609 (2001)
• [文献書誌] KATAYAMA S., SETO N., MIZUTANI M., MATSUNAMWA A.: "X-ray Transmission In-Situ Observation of Keyhole during Laser Spot Welding and Pulse-Shaping for Prevention of Porosity"Proc. of ICALEO'2001, Jacksonville, FL, USA, Oct. 15-18, 2001. E-804-E-809 (2001)
• [文献書誌] S.Katayama, Y.Kobayashi, M.Mizutani, A.Matsunawa: "Effect of Vacuum on Penetration and Defects in Laser Welding"Journal of Laser Applications. Vol.13, No.5. 187-192 (2001)
• [文献書誌] 文 鐘賢, 水谷正海, 片山聖二, 松縄 朗: "異波長重畳レーザによる薄板重ね溶接特性"溶接学会全国大会講演概要集(2001.10.21). 第69集. 38-39 (2001)
• [文献書誌] J.H.Moon, M.Mizutani, M.Goto, S.Katayama, A.Matsunawa: "Melting Characteristics and Energy Absorption in Metals Welded with Combined Laser Beams of Different Wavelength"Proc. of 7th International Welding Symposium, Japan Welding Society, Nov. 20-22, 2001, Kobe, Japan. Vol.1. 497-502 (2001)