研究概要 |
本研究は、赤鉄鉱、褐鉄鉱の0.15-0.21mmの粉を原料として、これを硫黄活量0.1-0.6のH_2-H_2S混合ガスで還元し、同一硫黄活量のCO-H_2-H_2S混合ガスで炭化して、炭化鉄を製造する研究である。研究は、(1)熱天秤により500〜700℃、全圧(p_T)0.1〜0.6MPaの加圧下で還元鉄の炭化鉄生成速度を重量法で測定する研究、(2)加圧下、600℃で流動層による赤鉄鉱からの還元鉄から炭化鉄を生成する研究、(3)塊状の鉄鉱石を還元・炭化して炭化鉄を製造し、これを粉砕して脈石を分離する研究、の3つに分けることができる。順を追って説明する。 1)全圧力範囲において断面組織観察より還元鉄の気孔表面での浸炭反応律速と仮定し、炭化率f_θ元と反応時間t間の炭化率曲線に、積分一次反応速度-1n(1-f_θ)=g(p_i, T)tがよく適用でき、浸炭反応速度g(p_i, T)を求めてそのp_T、ガス組成存性を調べたその結果、硫黄活量一定で10%から90%H_2までの組成で、g(p_i, T)は600℃ではp_Tの1乗に比例して速くなり、700℃ではp_Tの1.4から1.5乗に比例することを見出した。この全圧依存性を基に、CO分子の解離吸着過程CO→[C]+O(ad)が浸炭反応の律速過程であること、高温、低H_2%の条件では、その解離吸着過程とH_2、COによる吸酸素O(ad)除去過程の混合律速となることがわかった。この反応機構に基づき、反応速度式と速度パラメータの決定を行った。これにより、シミュレーションが可能になった。 2)加圧流動層による600℃での還元鉄からの炭化鉄生成の実験を行った。反応化率は、10〜15minおきに採取したサンプルをX線回折と炭素分析で分析して組成を求め、それから決定した。流動層の反応でも近似的に一次応速度式が適用できることが確認された。その解析により、浸炭速度g(p_i, T)を求めた。これから80%CO-20%(H_2+H_2S)のガス組成で全圧の1.0乗に比例することを確認した。また、排ガスの組成を赤外線・熱伝導ガス分析計、水蒸気センサーで分析し、吸着酸素を除去する2つの反応O(ad)+H_2→H_2O、O(ad)+CO→CO_2の割合を求めた。その結果、炭化鉄の生成には主に前者の反応が、副反応の炭素析出には主に後者の反応が寄与していることが分かった。これらに実験結果から、加圧することによって炭化鉄生成速度を高速で生産することができることを確認した。反応モデルとして、押し出し流れモデルと気泡成長モデルを作成し、実験結果を説明できることを示した。これにより、流動層のスケールアップに寄与できる。褐鉄鉱を大気圧下の流動層において700-1000℃でH_2で還元し、硫黄吸着後CO-H_2-H_2S混合ガスにより600〜800℃で炭化する実験を行い、900℃で還元し700℃で炭化するのが最適条件であることを示した。 (3)塊状の鉄鉱石を、還元・炭化して塊状の炭化鉄を製造し、粉砕して磁力選鉱にかけ、磁着分と非磁着分の組成を分析によって求めた。その結果、ある種の褐鉄鉱では、最大8%の脈石分が含まれていたが、炭化鉄生成物から磁力選鉱に脈石を分離できないことが分かった。これは鉱石の性状によるものと推定される。
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