研究概要 |
アルカリ土類元素Ca,Sr,Baをパイロクロア型酸化物La_2Zr_2O_7のAサイトとBサイトにそれそれドープした試料へのプロトンの溶解機構はホールの消耗に関して異なることが示唆されている。本研究では溶解機構の差異を実証するために、Ca^<2+>をAサイトおよびBサイトにドープした試料にH_2OガスおよびD_2Oガスを吸収させて、赤外線吸収スペクトルを測定して比較した。Aサイト置換試料にH_2O溶解処理を行うと3500cm^<-1>近傍に3本のシャープな吸収が観測され、ブロードなピークを示すペロブスカイトのデータとは大きく異なった。D_2O溶解処理をするとピーク形状をそのままに2500cm^<-1>と低波数側に移行し、溶解プロトンを検出していることが確認された。Bサイト置換試料にも同様のD_2O処理効果が現れた。Bサイト置換試料の場合には6本以上のピークが現れた。さらに、Aサイト、Bサイト置換試料で各ピークの水蒸気分圧依存性は大きく異なり、プロトンの溶解機構が大きく異なることが実証された。溶解機構の差異により、Ca,Sr,BaをLa_2Zr_2O_7のAサイトおよびBサイトにドープした試料の接合体では起電力が生じることを前年に実証している。そこで、SrをLa_2Zr_2O_7のAサイト、Bサイトにドープした混合粉末を用いてを作製して、発生内部電圧を利用したNO_2ガスの分解を試みた。NO_2濃度の検出には四重極質量計を用いたが検出感度が十分ではなく、NO_2ガス分解を確証するところまではいかなかった。本研究のポイントは、性質の異なる2種類のバルク相(細胞)を生体のように細かく混ぜ合わせた生体細胞型セラミックス)を作製して、外部雰囲気の変化に伴う水蒸気の溶解が細胞間で異なることを利用して、細胞間に電子およびイオン電流を発生させることにある。そのためには、今後、2種類のパイロクロア型セラミックスの微粒子の作製方法、貴金属微粒子の混合方法を検討し、さらにNO_2ガス検出方法を確立して実証する必要がある。
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