研究概要 |
簡単に1万度程度の高温状態を作ることのできる熱プラズマは種々の材料プロセスに応用されている.しかし,最重要な問題点は,プラズマが材料と接触することにより何らかの効果を生むプロセスでありながら,その接触部の物理と化学が十分に理解されていないため,詳細なパラメータ制御ができないことにある. 本研究は,溶解,精錬,廃棄物処理,溶接など材料が溶融して激しい蒸発を伴う熱プラズマ材料プロセスに焦点を絞り,プラズマと材料の間の熱・物質輸送について実験計測を行い,理論的数値解析と比較することによって,材料と密接に関係するプラズマアーク電極現象を明らかにしようとするものである. 本年度は,アークプラズマ中に蒸発原子が混入した場合の基礎実験として,まず,純アルゴンと純ヘリウム雰囲気のそれぞれの場合のガス・タングステン・アーク(GTA)プラズマを診断し,双方のプラズマの状態を比較することによって雰囲気ガスの違いがプラズマ状態に及ぼす影響を検討した.その結果,アルゴンGTAの50Aでは正の陽極降下が現れ,その場合の陽極近傍のプラズマ状態はLTEから大きくずれた態であり,一方,150Aでは負の陽極降下が現れ,その場合の陽極近傍のプラズマ状態はLTEに近い状態であることが明らかにされた.さらに,ヘリウムGTAの150Aと250Aのそれぞれの場合のプラズマ状態がアルゴンGTAの50Aと150Aのそれぞれの場合と定性的に一致することが明らかにされた.以上より,雰囲気ガスの違いは,GTAプラズマの定性的な振舞いを変えるものではなく,あるプラズマ状態の形成条件をガス物性に相当する量だけシフトさせることが示唆された.
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