研究分担者 |
由井 宏治 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助手 (20313017)
藤浪 眞紀 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助教授 (50311436)
北森 武彦 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (60214821)
片山 建ニ 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助手 (00313007)
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研究概要 |
本課題では液相中ナノ空間の化学現象を解明することを目的として,複数の手法開発およびその具現化を研究した。ナノ空間における分子の高感度分析法の観点では,光熱変換現象を利用した熱レンズ顕微鏡を液相微小空間測定に適用可能とした。得られた信号に対して表面の凹凸の効果を考慮した解析手法を考案し,実際の細胞膜上の抗原抗体反応をとらえることに成功した。また,本手法を微細流路を加工したカラスチップ上の微小空間での化学反応の解析に適用し,微細流路での反応特異性を明らかにした。次に液相中の特異なナノ空間である液液界面に関して,その界面張力波周波数から分子数密度を測定する準弾性レーザー散乱法を開発し,液液界面を介しての物質移動・分子反応をその場計測することに成功した。界面活性剤の吸着脱離のダイナミクス測定,相間移動触媒における反応場の解析,リン脂質膜上加水分解反応の追跡等に応用し,新たな知見を得ている。 液相中の溶質分子から溶媒分子へのエネルギー伝達機構を明らかにすることを目的として,光熱変換現象を利用したフェムト秒過渡レンズ法の高度化を行い,光励起した分子運動および反応の溶質溶媒効果の研究を行った。オーラミンO分子の回転運動では溶媒の平均運動量依存する緩和過程を初めて観測し,またアミノアゾベンゼンの光異性化反応では,反応中間体の緩和過程に溶媒依存性あることを見出した。また,ナノ空間て起こる特異な現象としてレーザーブレイクダウンプラズマ生成極初期(数十ps)に誘導ラマン散乱光が励起光と同軸上に発生することを発見し,その液相構造解析手法としての可能性を検討した。 本課題で開発・具現化した計測法は,光熱変換現象や界面張力波を利用するものであり,蛍光性をもたない物質にも適用できることから汎用性も高く,かつ蛍光法と同等の感度をもつことから,これらによって新しいナノ空間化学を先導することが可能である。
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