航空機の翼の迎角を上げていくと、ある迎角において突如揚力の急減が生じる。これは翼の失速と呼ばれており、しばしば航空機の事故を引き起こす原因として知られている。失速について調べるためには、航空力学・空気力学的立場から見た機体の失速に対する特性のみならず人間工学的立場から見たパイロットの失速に関する操縦性の両面について考慮しなければならない。ここでは失速による航空機事故を防ぐために必要なパイロットによる最適な失速防止・回復操作を航空力学・空気力学と人間工学両面の立場から明らかにすることを目的とする。そのために空気力学的失速特性、パイロットの操縦性、およびワークロードを調べる研究を行う。第2年度である本年度は、フライトシミュレータの整備の継続と実機を用いたフライトテスト等を行った。具体的には、 1)初年度に導入したフライとシミュレータにモーション機能を付加するモーションアッシを導入した。 2)職業操縦士にフライトシミュレータ上で操縦してもらい、フライトシミュレータと実機との差を明確にするとともに、シミュレータの飛行モデルの改良を行った。 3)職業操縦士に実験被験者として計器飛行用シミュレータ上で操縦してもらい、飛行中のパイロットの反応、判断、操作状況を定量的に調べるとともにワークロード計測を行った結果を検討した。 4)フライトシミュレータで得られた結果を実地に検証するために、実際の航空機を用いて、職業操縦士に実験被験者として失速を含む有視界飛行および計器飛行を実際に飛行してもらう実験計測を行った。 5)航空機が失速する時の縦の運動特性を飛行力学的観点から検討した。 6)翼および全機航空機模型を用いた風洞試験を行い、失速の空気力学的特性の計測を引き続き行った。
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