研究課題/領域番号 |
10306006
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
松本 継男 京都工芸繊維大学, 繊維学部, 教授 (40107355)
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研究分担者 |
佐野 義孝 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 助手 (00226044)
伴戸 久徳 北海道大学, 農学部, 教授 (20189731)
前川 秀彰 国立感染症研究所, 放射能管理室, 省令室長(研究職) (60100096)
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キーワード | 家蚕核多角体病ウイルス / 温度感受性変異株 / ie1 / レトロトランスポゾン / DNAワクチン / プロモーター / インターフェロン / 不全感染 |
研究概要 |
平成11年度の役割分担にもとづき、以下の研究成果が達成された。 1)BmNPV必須遺伝子欠失法の考案: BmNPV温度感受性変異株ts-S1は、RNA polymerase遺伝子に変異をもつ。非許容温度において、ts-S1が感染したカイコ培養細胞では、ウイルス感染はDNA合成の段階で停止するが、感染細胞は分裂する。この現象は、ウイルスDNAが細胞分裂に伴って、分配される可能性を示している。しかし、非許容温度では培養細胞の生理状態が不安定であるため、この現象を確証するに至っていない。通常温度で、この現象を確認するためには、当該遺伝子を欠失したウイルスを得る必要がある。そこで、カイコ培養細胞を用いて、相同組換えによりウイルス増殖に必須で欠失を目的とした遺伝子を除去し、得られた非自律的に増殖するウイルスを欠失遺伝子により形質転換した細胞で選抜・増殖することを考えた。これにより、BmNPV ts-S1の場合、RNA polymerase遺伝子欠失BmNPVを作製することが可能となり、このゲノムを人工染色体として利用することが可能かどうかが判明する。 2)インフルエンザ抗原発現バキュロウイルスの作製: DNAワクチン創薬へのバキュロウイルスの利用に関して、バキュロウイルスでの遺伝子発現及びその機能解析ができる系が必要である。昨年度作成したレトロトランスポゾンR2Bmを導入したAcNPVを感染したレトロトランスポゾン欠損細胞C65株から抽出した全DNAに対しPCRを行った。R2Bmとゲノムの挿入予定部位下流のプライマーを使用した場合、明瞭なバンドが検出され塩基配列からR2Bmの3'端は、ゲノムの挿入予定部位に間違いなく挿入されていることが確認できた。しかし、他のプライマーによるPCRでは5'端は挿入されたクローンが単離できなかった。問題点を検討し解決する予定である。 3)リゾチーム発現誘導を利用した新規発現系の開発とミトコンドリアDNAの構造決定: まず、昨年度構築した改変BmNPV ie1プロモーターを更に改変するとともに、細胞培養条件の改良をおこない、改変前のie1プロモーターを用いた通常の発現系と比較して、1000倍以上高い発現量が得られる外来遺伝子発現系を確立した。また、発現系の改良に利用できる機能配列を探索する目的で、昆虫ウイルス(PfDNVとBmDNV-2)DNA(論文1.2)およびカイコのミトコンドリアDNAの構造解析を行い、ウイルス遺伝子およびミトコンドリア遺伝子(ATPase subunit 6,ATPase subunit 8,Cytochrome c oxidase subunit II等)の構造を明らかにした。 4)BmNPV温度感受性変異株のカイコにおける病毒性検定: BmNPV ts-S2は推定上ヘリカーゼ遺伝子p143の開始点から3424番目のアデニンがグアニンに変異しており、その結果アミノ酸配列で1142番目のメチオニンがバリン置き換わっている。Ts-S2は非許容温度において、ウイルスDNA合成が認められない点で、既に病毒性調査を実施したTs-S1とは異なっている。Ts-S2の病毒性とp143が個体においても必須であることを確認するために、BmNPV野生株及びts-S2をカイコ4齢起蚕に接種し、25℃と33.5℃で生物検定した。その結果33.5℃におけるts-S2の半数致死ウイルス量・半数致死時間は、野生株を接種し33.5℃で飼育した場合及びts-S2を接種し25℃で飼育した場合と比べて著しく大きかった。この事からp143はカイコ個体においても必須であり、ts-S2は個体においても温度感受性を持つことが示された。
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