研究概要 |
γ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT):グルタミン酸アナログである新規なアフィニティーラベル化剤を用いて,これまでに1次構造の分かっているGGTおよび類似の酵素において完全に保存されている小サブユニットN末端のThr残基が活性中心であることを明らかにした。GGTの新機能の開発を検討した。苦味を呈するアミノ酸をγ-グルタミル化すると呈味性が改善されることを見出した。大腸菌由来のGGTを用いて、苦味を呈するL-Pheを効率的にγ-グルタミル化する方法を開発した。GGTがアミノ酸ばかりでなくアミン化合物にもγ-グルタミル基を転移できることを示す目的で、L-タウリンをγ-グルタミル基受容体としてγ-グルタミル-L-タウリンの酵素合成を行い、器機分析により生成物を同定した。アミノペプチダーゼ:大腸菌におけるグルタチオン代謝研究の一環として、Cys-Glyase活性を持つ酵素を大腸菌K-12株に検索し、広い基質特異性を持つアミノペプチダーゼA,B,NとジペプチダーゼDがCys-Glyaseであり、Cys-Gly特異的なペプチダーゼは存在しないことを明らかにした。チロシンフェノールリアーゼ(TPL):3,4-Dihydroxyphenylalanine(L-DOPA)合成酵素であるTPLのX線結晶構造解析をおこない、2.1オングストロームまで精密化した後、Protein Data Bankに登録した。また、TPL遺伝子の転写調節因子TyrRにランダム変異を導入し、TPL高発現株を作製することに成功した。TPL遺伝子の転写活性化にはTyrRのオリゴマー化が必要であるが、変異を導入したTyrRではオリゴマー化が起こりやすくなっていることが示唆された。グルコース受容体(GPR1):出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeにおいて、グルコース依存的に細胞内cAMPレベルを制御するレセプターGpr1の機能解析を行った。GPR1遺伝子破壊株を構築しその表現型を調べたところ、出芽酵母2倍体を高グルコース、低窒素源状態においた場合に認められる偽菌糸形成が、野生株と比較した場合起こりにくくなっていることが明らかとなった。また、その原因が偽菌糸形成において細胞の接着に関与する細胞表層タンパク質をコードするFLO11遺伝子の転写減少によることを明らかにした。
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