研究概要 |
(1) アレルゲンの分子構造変化と免疫応答の関係 TCR-TgマウスのT細胞が認識するOVAの部分ペプチドOVA323-339はin vitroにおいて抗原未感作T細胞に対してIL-2、FN-γを高産生するTh1型の応答を誘導したのに対し、OVA323-339の一残基置換アナログの中には,IL-4、IL-5を高産生するTh2型の応答を誘導するものが認められた。また、OVA323-339は抗原未感作脾臓細胞に対して抗体産生を誘導しないのに対し、サイトカイン産生は誘導せずに抗体産生応答だけを誘導するアナログも存在した。さらに、T細胞応答を抑制するTCRアンタゴニスト活性をもつアナログも同定した。 (2) アレルゲンと腸管免疫系の相互作用 OVAを経口投与したTCR-Tgマウスのパイエル板細胞は抗原刺激に対しIFN-γ,IL-5を分泌し,腸管上皮内リンパ球はIEN-γを分泌した.パイエル板細胞の抗原提示は,未感作T細胞のIFN-γ分泌細胞への分化を誘導し,IL-4,IL-10分泌細胞への分化を抑制した.一方,OVAを経口投与したTCR-Tgのパイエル板においてCD4^+T細胞のアポトーシス誘導が確認された.現在ノックアウトマウス等を用いて、このアポトーシスの分子機構を解析している。 (3) 食品アレルギーにおけるIgE産生誘導の分子機構 0VAを経口投与したTCR-Tgマウスの脾臓にIL-4分泌能の高いT細胞が誘導された.このT細胞はin vitroでB細胞のIgE抗体分泌を誘導した. (4) 腸管免疫系により産生される免疫調節因子の神経系に対する作用 神経幹細胞の培養系を用い、神経系細胞に対するサイトカインの作用を解析した。その結果、IL-6およびBMPにより神経幹細胞からグリア系細胞への分化が誘導されることが明らかとなり、この分化を細胞内のc-Mycが抑制することが示された。
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