昨年、好中球活性酸素種産生能の測定系であるルミノール依存性化学発光法に関して、プライミングされた好中球では一酸化窒素合成酵素が12%程度発光に寄与するすることを証明した(Kudoh et al. 1999)。一方、運動負荷をモデルとした生体のストレス応答の研究を実施し、1時間を超える持久性運動では好中球のプライミングが生じ、これが成長ホルモンやインターロイキン6・8等の生理活性物質の血中濃度上昇と相関があること、さらに好中球のプライミング現象が筋損傷にも関与することが証明された(Suzuki et al. 1999)。さらにフルマラソン前後での検討で、血中一酸化窒素濃度がレース後に2倍程度上昇し、インターロイキン2の減少(消費)と相関すること、またフルマラソンではインターロイキン6・8、顆粒球コロニー刺激因子、成長ホルモン、プロラクチン等の好中球プライミング作用を有する生理活性物質が劇的に上昇するのみならず、コルチゾール・インターロイキン10等の免疫抑制物質の血中濃度も上昇することが証明された(Suzuki et al. 2000)。また手術侵襲をストレスのモデルとした研究も行ったが、このような極端なストレスでは、サイトカイン濃度が顕著に上昇しても好中球機能はむしろ抑制されることも判明した(Kowatari et al. 1999)。 以上を総合すると、生体がストレスに曝されると、種々の生理活性物質が分泌され血中好中球が活性酸素種や一酸化窒素を放出しやすい状態となり、炎症による生体損傷が惹起されるが、恒常性の攪乱を防ぐための適応機構も存在するものと考えられた。今後は、ビタミン等の活性酸素消去物質の動態をin vivoで調べると同時に、in vitroでも検討を進め(Liu et al. 1999)、スポーツ選手や消耗性疾患の栄養補給に関する基礎資料を得るための研究を展開し、包括をはかる。
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