老人性肺炎は不顕性誤嚥で生じることを第一に発見した。不顕性誤嚥は大脳基底核の脳血管性障害で生じ、そのときドーパミンの減少が生じる。ドーパミンの減少は嚥下反射と咳反射の作用物質であるサブスタンスPを減少させ、不顕性誤嚥が生じて肺炎に至る。 本研究では、ドーパミン合成をうながすアマンタジンを3年間にわたって投与したところ嚥下反射と咳反射が改善して、老人性肺炎を約1/5に減少させることができた。 次に、ACE阻害剤はサブスタンスPの分解酵素も阻害するため、サブスタンスPは分解されずに残り、結果として嚥下反射と咳反射が正常化する。すると不顕性誤嚥が生ぜず、老人性肺炎は減少すると考えられる。 本研究ではイミダプリル(ACE阻害剤)を2年間にわたり投与したところ、老人性肺炎の発生を約1/3に減少させた。 従来老人性肺炎は要介護老人の直接死因として最大の死因であり、オスラーによって、100年前に「肺炎は老人の友」と言われた病気であった。しかし、要介護老人200万人のため介護保険が制定されている今日、これらの人達の老人性肺炎の予防は極めて重要と考えられる。 本研究により、老人性肺炎発生を予防することは極めて社会的意義が高いと考えられる。
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