研究課題/領域番号 |
10307014
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐々木 英忠 東北大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (20004731)
|
研究分担者 |
山谷 睦雄 東北大学, 医学部・附属病院, 助手 (60261640)
|
キーワード | 誤嚥性肺炎 / 不顕性誤嚥 / 脳血管障害 / ドーパミン / サブスタンスP / 口腔ケア / カプサイシン / ACE阻害剤 |
研究概要 |
老人性肺炎は脳血管障害、特に大脳基底核の脳血管障害を持っている人に多くみられる。大脳基底核の障害はこの部位にある黒質線状身体から産生されるドーパミンを減少させる。ドーパミン産生の減少は、迷走神経知覚枝から咽頭や気管に放出されるサブスタンスP(SP)の量を減少させる。実際、老人性肺炎をおこした患者から強制的に排出した喀痰中のサブスタンスPの量は少ない。SPは嚥下反射と咳反射の原動力となる物質であるため、SPの減少は嚥下反射と咳反射を低下させる。実際、老人性肺炎患者では嚥下反射と咳反射の低下がみられる。両反射の低下は不顕性誤嚥を生じることになる。そして、脳血管障害発症後2年間のうちには高率に肺炎を起こしやすくなり、特に両側大脳基底核の脳血管障害において著しい。 以上より、老人性肺炎の肺炎は最初に大脳血管障害があり、ドーパミンの低下、SPの低下、そして不顕性誤嚥で肺炎にいたると考えられた。つまり老人性肺炎は単なる結果であり、大脳基底核の脳血管障害が原因であるともいえる。 不顕性誤嚥が生じるとしても、せめて口腔内雑菌が少なければ肺炎成立の機会は少ないと考えられる。不顕性誤嚥の防御反射である嚥下反射や咳反射は夜間睡眠中に生じ易い。口腔ケアのみを実行した群と非実行群に分けると口腔ケアによって2年間で肺炎の発生率を40%減少させることができた。要介護老人の口腔ケアが大切であると言える。
|