研究概要 |
本研究では、『循環器疾患(高血圧、虚血性心疾患、脳卒中)の原因遺伝子の同定』を目的とし、候補遺伝子アプローチにより原因遺伝子の同定を目指していた。都市部地域住民集団で実施中のコホート研究では、最終的に5,014人分のACE遺伝子多型が決定され、米国白人同様、日本人でもDD型が高血圧リスクとなることが示された(Circulation,2000)。一方、岩手県で実施中の農村部地域住民の大規模コホート研究では、東北大学倫理委員会の承認を得て、24時間血圧変動と関連する遺伝因子、高血圧に起因する合併症と関連する遺伝因子を検討中を行い、ラクナ梗塞や大脳MRIで示されたPVH(periventricular hyperintensity)とangiotensinogen,AT1遺伝子多型の関連を示唆する結果を得たほか、欧米で報告されたGNB3遺伝子多型は日本人ではリスクとならないことを報告した。さらに、Naチャンネル遺伝子のβサブユニットに同定した新たな多型に関する解析結果も報告した。一方、アンジオテンシノーゲン遺伝子(AGT)多型解析では、多型・血中濃度・高血圧リスクの関連を検討し、AGT/M235T多型と高血圧の関連には血中AGT濃度上昇が直接関与しないことを示した。さらに、薬剤反応性では、ACE/DDがACE阻害薬のPTCA後の再狭窄予防や降圧薬治療に対する抵抗性を増すことなども見いだした。さらに、これら大規模一般集団を用いた解析と、ケース・コントロール研究の利点・欠点についても言及し、高血圧等の生活習慣病感受性遺伝子解明を目指すポストゲノムプロジェクトの礎を築いた。
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