研究概要 |
(1)OX40シグナルの分子機構とその制御:TRAF3の共発現によって、TRAF2で誘導されるNF-κB活性化は抑制されたが、NIK発現による活性化誘導は影響されなかった。また、いくつかの欠損変異TRAF3を用いた解析において、TRAF3のC末側ドメインだけでなく、N末側ドメインにも抑制活性が認められた。以上の結果からTRAF3がOX40とTRAF2の結合阻害だけでなく、TRAFとNIKの間のシグナル伝達経路への作用によってNF-κBの活性化を抑制している可能性が示唆された(Biochem.Bioph.Res.Co.272:856,2000)。 (2)gp34の細胞内シグナル伝達:マウス上皮細胞株MMCEのヒトgp34トランスフェクタント(MMCE-gp34)またはヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を可溶型リコンビナントOX40(sOX40)で刺激する系において、早期反応性遺伝子の発現をNortheor blotで解析した。その結果、sOX40刺激によりMMCE-gp34ではc-fos とc-junの発現が、またHUVECではc-junの発現が誘導されることを明らかにした。すなわち、OX40/gp34系のシグナル伝達は双方向性であることを示した(J.Immunol.163:3007,1999)。 (3)血管内皮細胞によるT細胞の活性化におけるOX40/gp34系の役割:純化した正常CD4^+T細胞は固相化抗CD3抗体による刺激に対して殆ど増殖反応を示さないが、放射線照射したHUVECを共存させると強いIL-2依存性の増殖反応が誘導された。そしてこれは、抗gp34抗体の添加によって著明に抑制され、その程度は抗ICAM-1抗体や抗LFA-3抗体よりも顕著であった。これらの結果から、OX40/gp34系を介する補助シグナルが血管内皮T細胞によるT細胞増殖促進作用の主たるメカニズムの一つであることが判明した(J.Leuk.Biol.68:111,2000). (4)ATLの病態形成におけるOX40/gp34系の役割:ATL細胞にはOX40が構成的に発現しているので、OX40と細胞の生存とくにアポトーシス抵抗性との関わりについて検討した。正常活性化T細胞、OX40をトランスフェクトしたT細胞株、またはOX40を発現したATL患者の白血病細胞やOX40をトランスフェクタントしたT細胞株をgp34トランスフェクタント細胞と共培養すると、抗Fas抗体で誘導されるアポトーシスが抑制されること、また、このときXIAPの発現増加を伴っていることを観察した。したがって、ATL細胞が、異常発現したOX40を介して、生存に有利なシグナルを与えられている可能性が示唆された(発表予定)。
|