研究課題
脳室周囲白質軟化症(PVL)は脳性麻痺の大きな原因として注目されているが、このPVL発症に臍帯反復圧迫が関与していると考え満期に近い羊胎仔を用いた実験を行った。臍帯圧迫は、3分の臍帯圧迫を5分間の間隔をおいて5回繰り返した。24時間後に解剖して調べた結果、脳の損傷により、主に脳室周囲白質に損傷を受けた群、主に大脳皮質と視床に損傷を受けた群、脳のどこにもほとんど損傷を受けなかった群の3群に分類する事ができた。それぞれの群において臍帯圧迫によるpH、PaCO2、PaO2に差は認められなかったが、血圧などの循環動態には差が認められた。臍帯圧迫および圧迫解除後の血流再開に伴う胎児循環動態変化における一酸化窒素(NO)の関与を調べる目的で、NO合成阻害剤であるN omega nitro-L-arginine methyl ester(L-NAME)を用いた実験を行った。妊娠120〜130日齢の羊胎仔に対して、臍帯圧迫開始1時間前にL-NAMEを300mgワンショットで投与後、毎時100mgの速度で持続的に投与した群(L-NAME群)と、同じように生理食塩水のみを投与したコントロール群に対して臍帯反復圧迫をした時の胎仔動脈ガス、カテコラミン、ACTH、心拍数、血圧を検討した。臍帯圧迫中、両群とも心拍数、血圧は低下し、圧迫解除により、ただちに一過性の頻脈、血圧上昇を認めた。臍帯圧迫と解除により血中カテコラミン、ACTHは著明に変化したが両群に差はなかった。反復臍帯圧迫終了直後は両群とも著明な頻脈、血圧上昇、アシドーシスを認めたが、L-NAME群では、この頻脈が血流再灌流5分後以降では有意に抑制されていた。NO合成阻害剤であるL-NAME投与により血流再灌流時の頻脈が抑制されたことにより、血流再灌流時の胎仔頻脈の発生にNO合成酵素を介したNOの関与が示唆された。
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