研究課題
基盤研究(A)
臍帯血流障害が胎児の脳に与える影響とメカニズム解明のための実験を行った。羊胎仔を臍帯反復圧迫群とコントロール郡に分け臍帯反復圧迫の24時間後に解剖して脳を中心に病理学的検討を行った。臍帯反復圧迫群の胎仔脳には多彩な組織学的異常所見を認めたが、脳の損傷部位により、主に脳室周囲白質に損傷を受けた群(A群)、主に大脳皮質と視床に損傷を受けた群(B群)、脳のどこにもほとんど損傷を受けなかった群(C群)の3群に分類する事ができた。A群では臍帯圧迫開始前に血圧と血中過酸化脂質の高値が認められており、圧迫開始前に何らかの負荷が加わっていたことが示唆された。B群では圧迫中に低血圧を認めており、A群とは異なる反応を示していた。羊胎仔において、臍帯反復圧迫により脳室周囲白質に虚血性病変を生じさせることができるが、その発生には臍帯圧迫開始前の胎仔の状態が重要な意味を持つことが示唆された。また、免疫染色による検討から、脳傷害発生には虚血により誘導されたサイトカインやフリーラジカルに対するグリア反応が関係している可能性も示唆された。さらに臍帯圧追および圧迫解除後の血流再開に伴う胎児循環動態変化における一酸化窒素(NO)の関与を調べる目的で、NO合成阻害剤であるN omega nitro-L-arginine methyl ester(L-NAME)を用いた実験を行った。羊胎仔に対して、L-NAMEを投与した群(L-NAME群)と、同じように生理食塩水のみを投与したコントロール群に対して臍帯反復圧迫を行った.臍帯反復圧迫終了直後は両群とも著明な頻脈、血圧上昇、アシドーシスを認めたが、L-NAME群では、この頻脈が血流再潅流5分後以降では有意に抑制された。このことから、血流再潅流時の胎仔頻脈の発生にNO合成酵素を介したNOの関与が示唆された。
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