研究課題
基盤研究(A)
浸潤リンパ球にアポトーシスを誘導し拒絶反応から防御する目的でFasL遺伝子の導入を検討した。アデノウィルスを用いた検討ではEl領域にCAGプロモーターとその下流にFasLcDNAさらに下流にはポリAを挿入、かつCAGとFasLの間に両端にloxP配列を持つスタッファーを置いた(adloxP FasL)。スタッファーにはネオマイシン耐性遺伝子とポリAが存在している。したがって、adloxPFasLを導入してもFasLは発現しない。loxP配列を特異的に切断するCre酵素を発現するベクター(adCre)を共感染させることでスタッファ一遺伝子が除去され、FasLのmRNAへの転写が開始する。マウスにadloxPFasLとadCreを静脈内投与したところ、adCreの投与量依存的なFasL発現が肝で見られた。発現量を高めると2日以内に劇症肝炎により死亡した。ラットで劇症肝炎を起こさないadloxPFasLとadCreの投与を行い、3日目の肝を同種移植した。生存日数は著明に延長したが、永久生着は得られず、最長は32日であった。アデノウィルスにより肝細胞で多量のFas抗原が発現することが考えられた。そこで、ウィルスによらないHVJ-リポゾームによる遺伝子導入を行った。FasLcDNAを組み込んだプラスミドをリポゾーム膜に内包、周囲を不活性化したセンダイウイルスで覆ったものである。センダイウイルスの細胞融合能を利用して細胞膜とリポゾーム膜を融合させ、中のプラスミドを標的細胞内に移入する。経門脈投与により肝での遺伝子発現効率はl0〜20%であった。その肝を同種移植したところ、最大で42日間の生着延長が得られたが、やはり永久生着には至らなかった。FasLの発現量が十分でないと考えられた。今後は、肝炎を起こさずに十分なFasLを発現させ、拒絶反応を確実に抑制していく手技の開発をめざす。
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