研究課題/領域番号 |
10307034
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
岩本 幸英 九州大学, 医学部, 教授 (00213322)
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研究分担者 |
小田 義直 九州大学, 医学部, 助手 (70291515)
田仲 和宏 九州大学, 医学部, 助手 (10274458)
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キーワード | Ewing肉腫 / PNEN / EWS-Fli1融合遺伝子 / 分子生物学 |
研究概要 |
Ewing肉腫(ES)およびPrimitive Neuroectodermal Tumor(PNET)は、骨軟部悪性腫瘍の中で最も生命予後不良な腫瘍であり、診断、治療法の改善が切望されている。ESおよひPNET(ES/PNET)の85%以上の症例で染色体転座t(11:22)(q24;q12)がみられ、その結果、第11染色体上の遺伝子Fli1と第22染色体上の遺伝子EWSの間で、異常な融合遺伝子EWS-Fli1が生じる。この融合遺伝子産物は強力な転写因子として働き、正常線維芽細胞をtransformする活性を有することが知られており、異常な転写因子EWS-Fli1はES/PNETの癌化の原因そのものと考えられている。我々は、ES/PNET細胞株を用いEWS-Fli1融合遺伝子発現と増殖能との間に正の相関があり、EWS-Fli1融合遺伝子はES/PNETの癌化のみならず、その生物学的性質をも規定している可能性があることを示した。本研究の目的は、(1)EWS-Fli1融合遺伝子発現と、増殖以外の悪性形質、即ち腫瘍血管新生能および浸潤転移能との関係を明らかにすること、(2)EWS-Fli1融合遺伝子によって誘導される標的遺伝子を調べること、(3)臨床検体におけるEWS-Fli1融合遺伝子発現が生存期間、転移再発の有無といった臨床的パラメータと相関があるかを検証すること、である。平成10年度は、主として、最も難易度が高い(2)の目的に向けて、subtraction cloning systemの構築に取り組んだ。その結果、コントロール実験において、細胞特異的遺伝子の単離とDNA配列の決定に成功し、システムが有効に作動することが確認できた。また、微量の臨床検体からのRNA精製と、nested RT-PCRによるEWS-Fli1融合遺伝子発現の検出系を構築した。さらに、本年度は新たに4例のES/PNET症例を治療し、臨床検体の収集と臨床的データの蓄積を行った。
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