研究課題
基盤研究(A)
Royal College of Surgeon′s(RCS)ラットの視細胞変性に対するbFGF導入虹彩色素上皮細胞(bFGF-IPE)移植による効果およびBDNF導入虹彩色素上皮細胞(BDNF-IPE)のBDNF遺伝子発現、タンパク質濃度、視細胞外節に対する貧食能、及び網膜神経細胞初代培養系を用いて網膜神経細胞保護作用について検討した。bFGF遺伝子をpCXN2ベクターに組み込み、リポフェクション法により培養ラット虹彩色素上皮細胞(IPE)に導入した。生後21日齢のRCSラット網膜下にbFGF導入IPEの移植を行い、移植1カ月後に組織学的観察を行った。bFGF導入IPE移植網膜では、視細胞の変性が阻止され、視細胞は高く保持されていた。また、保持された視細胞は光伝達に関与するトランスデューシン遺伝子を発現しており、視細胞としての機能を保持している可能性が示された。さらにBDNF導入虹彩色素上皮細胞(BDNF-IPE)を作製し、BDNF遺伝子の発現量、タンパク質濃度、視細胞外節に対する貧食能、及び網膜神経細胞初代培養系を用いて保護作用について検討した。IPEの責食能はRPEの約1/2であった。IPEと比しvector-IPEは同程度、bFGF-IPEとBDNF-IPEはそれぞれ2倍、6倍の貧食能を示した。また、BDNF-IPEは各世代でBDNF遺伝子の発現、またタンパク質濃度の上昇を認めた。これらの発現量は各世代間で著明な差は認めなかった。網膜神経細胞に対するこれらの遺伝子導入IPEの保護作用を検討したところ、網膜神経細胞はNMDA添加により細胞死に至ったが、網膜神経細胞・BDNF-IPE共培養群、MK-801添加群では細胞死数が減少し、保護効果が確認された。また、網膜神経細胞・BDNF-IPE共培養群、MK-801添加群間に差は認めなかった。さらに、網膜神経細胞・BDNF-IPE共培養群にBDNF抗体を添加した場合、その保護効果は減弱した。形質転換により安定したbFGF-IPE、BDNF-IPEを作製し、そのbFGF、BDNFの発現により、IPE貧食能がぷ亢進した。また、網膜神経細胞・BDNF-IPE共培養群はNMDA誘発細胞死に対し保護効果を有したことからBDNF-IPEは細胞活性を有するBDNFを発現していることが確認された。これらの基礎研究を行う一方で、1998年東北大学倫理委員会の承認を得、加齢黄斑変性症に対する自己虹彩色素上皮細胞移植による治療を実施した。
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