研究課題/領域番号 |
10307042
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
本田 孔士 京都大学, 医学研究科, 教授 (90026930)
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研究分担者 |
万代 道子 京都大学, 医学研究科, 助手 (80263086)
高木 均 京都大学, 医学研究科, 助手 (70283596)
高橋 政代 京都大学, 医学研究科, 助手 (80252443)
谷原 秀信 京都大学, 医学研究科, 講師 (60217148)
柏井 聡 京都大学, 医学研究科, 講師 (50194717)
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キーワード | 虚血性網膜細胞死 / アポトーシス / bax遺伝子 / bcl-2遺伝子 / TUNEL染色 / グルタミン酸 / NMDA受容体 / 一酸化窒素(NO) |
研究概要 |
Sprague-Dawleyラットに眼内圧を130mmHgに上げて45分間負荷後、TUNEL染色しDNAの断片化を調べると、虚血後6時間後からTUNEL陽性細胞が、網膜神経節細胞層(GCL)および網膜内顆粒層(INL)に生じ24時間で陽性細胞数は最大となり虚血後48〜96時間で急速に減少した。外顆粒層は168時間を通じて数個の陽性細胞を認めるのみであった。虚血後24および48時間後の網膜(n=3)から抽出したDNA(10〜20μg)は、1.3%アガロースゲル電気泳動で約180塩基対の正数倍のDNA断片に分かれ、虚血によって網膜内層ニューロンにアポトーシスが惹起されることがわかった。 逆転写-ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)法からbax mRNAは虚血後6時間から急速に増加し24時間で最大となり、その後徐々に減少し168時間後に虚血前の基準量になった。一方、bcl-2 mRNAは虚血後168時間までの観察期間において有為の変動はなかった。虚血24時間後にGCLおよびINLにおいてBaxが誘導されることを免疫組織学的に確認した。baxのアンチセンスのオリゴデオキシヌクレオチッドを硝子体内に注入し24時間後に網膜に45分間の虚血を負荷し24時間再灌流後に取り出し、虚血によって誘導されるBaxの抑制を確認するとともにTUNEL染色し陽性細胞を計測すると3nmol〜10nmolとbaxのアンチセンスに用量依存性にアポトーシスが抑制され、虚血負荷によってbax遺伝子の発現が増加し、GCLおよびINLにおいてアポトーシスを駆動し虚血性細胞死に関与していることがわかった。 我々は虚血によって多量に放出されたグルタミン酸がNMDA受容体を介して発生させた一酸化窒素(NO)によって網膜内層に選択的な細胞死が起こることを見出しているので、NMDA受容体とアポトーシスについて検討した。虚血負荷15分前にMK-801(10〜30nmol)を硝子体内に注入し45分間虚血を負荷したところ、24時間後のTUNEL陽性細胞数はGCLおよびINLではvehicleに比べ有為に減少した。NMDA(20〜200nmol)の硝子体内投与により24時間後にGCLおよびINLにTUNEL陽性細胞が認められ、MK-801(3〜30nmol)の同時投与で用量依存的に抑制された。NO合成酵素抑制剤(L-NAME)の硝子体内投与では、NMDA誘発網膜アポトーシスを抑制できなかったが、ヒドロキシラジカル除去剤であるDMSO(19.2nmol)をNMDAと同時投与するとTUNEL陽性細胞はGCLおよびINLいづれも有為に抑制された。細胞内でスパーオキシドを生成しヒドロキシラジカルによって毒性を発揮するpar aquat(10nmol)を硝子体内に注入し24時間後に取り出した網膜においてTUNEL陽性細胞がGCL-およびINLに多数認められ、DMSO(19.2nmol)の同時投与によって著明に減少した。さらに内在性抗酸化剤のグルタチオンの前駆体で細胞内グルタチオンレベルを上げるN-アセチルシステイン(NAC,300nmol)をNMDA投与の24時間前に硝子体内に注入しておくとTUNEL陽性細胞は有為に抑制された。以上より、虚血によって放出されたグルタミン酸が網膜内層ニューロンのNMDA受容体を介して活性酸素種を生じアポトーシスを惹起することがわかった。
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