研究課題/領域番号 |
10307042
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
本田 孔士 京都大学, 大学院・医学研究科, 教授 (90026930)
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研究分担者 |
高橋 政代 京都大学, 大学院・医学研究科, 助手 (80252443)
高木 均 京都大学, 大学院・医学研究科, 講師 (70283596)
柏井 聡 京都大学, 大学院・医学研究科, 助教授 (50194717)
万代 道子 京都大学, 大学院・医学研究科, 助手 (80263086)
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キーワード | 虚血性神経細胞死 / グルタミン酸 / NMDA受容体 / 一酸化窒素(NO) / bax遺伝子 / bcl-2遺伝子 / DNAの断片化 / アポトーシス |
研究概要 |
一過性網膜虚血モデルを用いて、虚血性網膜神経細胞死の機序を解明するin vivo研究を行った結果、以下の新知見を得た。 一過性網膜虚血障害において、TUNEL染色法により同定されるDNAの断片化が、虚血後6時間後から網膜神経節細胞層(GCL)および網膜内顆粒層(INL)に観察された。さらに虚血後の網膜から抽出したDNAは、ゲル電気泳動でアポトーシスに特異的なDNAラダーが検出され、虚血によって網膜内層ニューロンにアポトーシスが惹起されることがわかった。 我々は虚血によって多量に放出されたグルタミン酸がNMDA受容体を介して発生させた一酸化窒素(NO)によって網膜内層に選択的な細胞死が起こることを見出しているので、NMDA受容体とアポトーシスについて検討した。虚血負荷前にMK-801を硝子体内に注入したところ、TUNEL陽性細胞数は有為に減少した。NMDAの硝子体内投与によりTUNEL陽性細胞が認められ、MK-801の同時投与で用量依存的に抑制された。NO合成酵素抑制剤(L-NAME)の硝子体内投与では、NMDA誘発網膜アポトーシスを抑制できなかったが、ヒドロキシラジカル除去剤であるDMSOをNMDAと同時投与するとTUNEL陽性細胞は有為に抑制された。細胞内でスパーオキシドを生成しヒドロキシラジカルによって毒性を発揮するparaquatの硝子体内注入によりTUNEL陽性細胞が多数認められ、DMSOの同時投与によって著明に減少した。さらに内在性抗酸化剤のグルタチオンの前駆体で細胞内グルタチオンレベルを上げるN-アセチルシステイン(NAC)をNMDA投与前に硝子体内に注入しておくとTUNEL陽性細胞は有為に抑制された。以上より、虚血によって放出されたグルタミン酸が網膜内層ニューロンのNMDA受容体を介して活性酸素種を生じアポトーシスを惹起することがわかった。 アポトーシス促進因子であるbax mRNAは虚血後一過性に増加した。一方、アポトーシス抑制因子であるbcl-2mRNAは虚血後変動はなかった。また、虚血後にGCLおよびINLにおいてBaxが誘導されることを免疫組織学的に確認した。baxのアンチセンスのオリゴデオキシヌクレオチッドを硝子体内に注入し24時間後に網膜に虚血を負荷し24時間再灌流後に取り出し、虚血によって誘導されるBaxの抑制を確認するとともにTUNEL染色し陽性細胞を計測するとbaxのアンチセンスに用量依存性にアポトーシスが抑制され、虚血負荷によってbax遺伝子の発現が増加し、GCLおよびINLにおいてアポトーシスを駆動し虚血性細胞死に関与していることがわかった。
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