研究課題
まず、哺乳類胚の歯胚の発生機序の解明では、囓歯類胚の口咽頭膜が破れる前の内胚葉細胞層を蛍光色素DiIあるいは標識遺伝子を組み込んだアデノウイルスで標識した後、全胚培養を行い、咽頭胚期および器官形成期胚における内胚葉細胞の存在領域を確かめた。その結果、原始口腔の前腸内胚葉は、神経管の形態形成に重要な役割を演ずる脊索前板や脊索最前端に近接した内胚葉細胞層に由来し、同部位ではShhが発現しており、前腸内胚葉におけるshhシグナリングは顔面の形態形成に重要な役割を演じているという可能性が示唆された。さらに、内胚葉を標識後に全胚培養と器官培養を組み合わせた長期培養法を用いて9日間培養した結果、initiation期と蕾状期の歯胚上皮に隣接して内胚葉細胞が存在することが明らかになった。このことから、哺乳類の歯胚形成のinitiationに内胚葉細胞か関わっていることが強く示唆された。顎の発生機序とシグナリング機構の解明では、まず、Fgf-8を発現する第一鰓弓の口腔側の付けねの領域の上皮は間葉細胞の増殖を維持することができ、近傍の宿主の間葉細胞の増殖を促進する一方、間葉のみの移植片では増殖が維持されないことを確認した。よって口腔側基部の上皮と間葉の両方が、顎の発生に重要であることが示唆された。さらに、第一鰓弓の口腔側の付けねになる口咽頭膜の下方の領域は、移動直後の中脳後方由来の神経堤細胞にはメッケル軟骨を誘導できるが、中脳前方の神経堤細胞にはできないことを明らかにし、顎の発生には中脳の神経堤細胞の移動経路と移動先の環境の両方が顎のinitiationに重要であることを明らかにした。また、この過程における上皮-間葉相互作用をBMP-MSXカスケードに注目し、BMPビーズの埋入実験からBMPがMSXシグナリングを介して下顎の部位特異的な細胞増殖と細胞死を制御して軟骨形態を変化させることを明らかにした。また、頭蓋冠癒合症の解析からFGFRを介するシグナリングが頭蓋骨の発生に重要であることを明らかにした。
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