研究概要 |
(1) 高融点純金属インプラント、連接インプラント、傾斜機能型インプラントの作製、(2)各インプラントの動物埋入実験による生体親和性の評価、(3)炭化物・窒化物試料作製装置の組立と一部試料作製を行なった。 (1) 試料 高融点金属中IVA属(Ti,Zr,Hf),VA属(V,Nb,Ta),VIIA属(Re),VIII属(Fe,Ni,Cu,Ag)の純金属、合金としてステンレス鋼、連接インプラントとしてレーザー溶接したTi|Zr,Ti|Hf,Ti|Vを作製した。傾斜機能型インプラントとしてTi/Co,Ti/HAP(アパタイト),Ti/ZrO_2を長さ方向、径方向にそれぞれ,傾斜するように粉末充填し、CIP加圧成形後、真空焼結する通常の方法のほかに放電プラズマ焼結(SPS)も使用し作製した。また窒素ガス雰囲気中、電気炉内高温加熱によるTiの表面窒化、炭化水素雰囲気中における表面炭化処理を行なった。 (2) 動物埋入試験 ミニチュア(1〜2φx6〜10mm)試験片を作製し、ラット皮下軟組織、大腿骨骨髄腔、家兎脛骨骨髄腔への1-8週の動物埋入実験を行った。インプラント付近の組織を固定、脱水後、包埋し切片を切り出し、自動研磨装置(購入)を用いて研磨し、染色して標本とした。 (3) 物性評価 原子間力顕微鏡(AFM)を用いた金属インプラントの表面粗さ、3点曲げ試験による連接インプラントの溶接強さの評価を行なった。 (4) 観察・分析 インプラント周囲の軟組織の炎症反応の有無、硬組織中の新生骨生成を評価するために染色した薄切切片を通常の光学顕微鏡(OM)のほかに共焦点レーザー走査型顕微鏡(CLSM)による断層撮影を行ない、さらに非染色のまま電子線アトフブマイクロアナリシス(EPMA)、X線走査型分析顕微鏡(XSAM)を用いたマッピングによるTi,Hf,V等の各金属の溶出とca,P,S,O,Fe等の元素分布、顕微ラマンスペクトル(購入)による官能基分布を可視化した。 (5) 生体親和性,高融点金属Zr,Hf,Nb,Ta,ReはいずれもTiと同等め生体親和性と新生骨生成能を示した。一方、V,Ni,Cuは著しい生体為害性を示し、Feは生体内の溶出が多いにもかかわらず為害性は小さかった。連接インプラントの動物埋入実験により異種金属を同一条件で比較することが可能になり、特にTi|VではTi側の新生骨生成、V側の為害性によって生じた骨吸収が対照的に示された。Ti/Co傾斜機能型インプラントではCo濃度の増加とともに軟組織の炎症反応が強くなること、Ti/HAPではHAPの増加とともに早期から骨生成が開始することが示され、材料の傾斜構造に応じて生体が傾斜的に反応することが認められた。
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