研究概要 |
1.ヒト口腔扁平上皮癌細胞(BHY,HN)とヒト唾液腺癌細胞(HSG,HSG-AZA1,HSG-AZA3,TYS)をベスナリノン存在下で培養すると、総ての細胞に増殖抑制が生じ、G1 arrestの惹起されることをFACS解析により明らかにした。2.TYS細胞をベスナリノンで処理すると、細胞増殖の抑制に伴ってTGF-b1,p21^<WAF1>,TSC-22遺伝子がup-regulationされることを、Northern blottingにより明らかにした。また、TSC-22遺伝子をクローニングした。3.BHY,HN,HSG,HSG-AZA1,HSG-AZA3細胞は総て、p53遺伝子(Exon4-Exon9)が野生型であることを明らかにした。なお、TYS細胞においては、コドン281^<Asp-His>に点突然変異の存在を認めた。4.TYS細胞をヌードマウスに移植して、ベスナリノン(200mg/kg,35日間経口投与)で治療すると、有意な腫瘍増殖の抑制と、keratinocyte differentiation及びacinardifferentiationを認めた。加えて、アポトーシスの誘導とLe^Y抗原の発現を検出した。5.顎下腺より発生した腺様嚢胞癌症例にベスナリノン(60mg/day,per os,43日間)を投与して著効を認めた。すなわち、著明な腫瘍の縮小と高度分化型tubular typeへの腫瘍分化の出現及びLe^Y抗原とアポトーシスの発現を認めた。加えて、口腔扁平上皮癌症例においても、ベスナリノン投与(180mg/day,per os,56日間。その後60mg/day,per os,93日間)によりCRになった症例を認めた。本症例においては、p53遺伝子は野生型であり、Le^Y抗原の発現とDNA断裂を高頻度に認めた。
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