研究概要 |
1.ヒト唾液腺癌細胞(TYS,HSG)を分化誘導剤ベスナリノン(3,4-dihydro-6-[4-(3,4)-dimethoxybenzoyl-1-piperazinyl]-2(1H)-quinolinone)で処理して誘導されるTSC-22遺伝子の機能解析を行い、以下の諸点を明らかにした。 (1)完全長TSC-22(TSC-22FL)を過剰発現したTYS細胞は抗癌剤5-フルオロウラシル(5-FU)に対する感受性が著しく上昇し、アポトーシスが誘導され、その時TSC-22蛋白は細胞質から核にトランスロケーションすることを明らかにした。 (2)TYS及びHSG細胞、チャイニーズハムスター卵巣由来繊維芽細胞CHOに各種TSC-22融合蛋白質をコードするプラスミドをトランスフェクションし、コロニー形成能に及ぼす影響を検討した。その結果、TSC-22ロイシンジッパー構造(GFP-TSC-22LZ)、或いは核内移行シグナルを付与したTSC-22ロイシンジッパー構造(GFP-NLS-TSC-22LZ)を発現させた場合、有意に足場非依存性コロニー形成能が抑制された。一方、足場依存性のコロニー形成能は、発現したTSC-22融合蛋白質の種類にかかわらず、HSG及びCHO細胞のコロニー形成能を抑制せず、むしろ軽度上昇した。 (3)上記の各種TSC-22融合蛋白質を発現させたTYS細胞の放射線感受性を検討した。GFP-TSC-22FL及びGFP-TSC-22LZ蛋白質を発現しているTYS細胞では、有意に放射線感受性が上昇した。一方、GFP-NLS-TSC-22LZを発現しているTYS細胞では、放射線感受性の上昇は軽度であった。即ち、TSC-22の過剰発現はTYS細胞において放射線感受性を増強し、TSC-22ロイシンジッパー構造が細胞質に存在する場合には、その効果が著明に認められるが、核内に存在する時は軽度であることが明らかになった。なお、放射線照射後に検索した総ての細胞でsubG1ピークの出現が認められアポトーシスの誘導が示唆された。 (4)放射線照射、5-FU処理により、GFPを用いた系により、核ヘのトランスロケーションを明らかにした。
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