研究概要 |
1.ヒト唾液腺癌細胞TYSを分化誘導剤ベスナリノン(3,4-dihydro-6-[4-(3,4)-dimethyoxybenzol-1-piperazinyl]-2(1H)-quinolinone)で処理して誘導されるP21^<Waf1>及びTSC-22遺伝子の発現制御の分子機構を解析して、以下の知見を得た。(1)ベスナリノンは、P21^<Waf1>遺伝子のプロモーター領域のTATA box上流に存在するSp1-1およびSp1-2サイトに転写因子Sp1あるいはSp3が結合して、p21^<Waf1>遺伝子の転写を活性化することを明らかにした。(2)TYS細胞をベスナリノンで処理すると、ヒストンアセチル化の誘導されることを明らかにした。(3)ヒトTSC-22遺伝子は3つのエキソンからなり、転写開始点はTATA boxより7bp下流の2126と29bp下流の2148に存在することを明らかにした。(4)TSC-22プロモーター領域には、NF-kB, MyoD, AP-1,PU, C/EBP, p53,C-Myb, Sp1,NF1,Smadなどの多くの細胞の分化・増殖を制御する分子の反応性領域のコンセンサス配列の存在を明らかにした。(5)TYS細胞をベスナリノンで処理すると、TSC-22遺伝子プロモーターは活性化された。2.ヒト唾液腺癌細胞HSG-AZA3は、ベスナリノン処理で著明な増殖抑制が惹起された。この場合、p27^<KiP1>遺伝子の発現誘導とcyclin-dependent kinase 2のdown-regulationが生じ、G1 arrestが誘導された。3.in vitro及びin vivoヌードマウスで増殖しているヒト口腔癌細胞を、ベスナリノンと5-Fluorouracil或いはGemcitabineとで併用処理すると著明な抗腫瘍効果を認めた。
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