研究概要 |
1.ヒトロ腔扁平上皮癌細胞(BHY, HN : p53野生型(エキソン4-9))とヒト唾液腺癌細胞[HSG, HSG-AZA1,HSG-AZA3:p53野生型:TYS:p53(コドン281^<Asp→Hls>))をベスナリノンで処理すると、細胞の増殖抑制が生じ、G1 arrestが惹起された。また、p21^<Waf1>, p27^<Klpl>, TSC-22遺伝子がup-regulationされ、p53はdown-regulationされた。2.TYS担癌ヌードマウスにベスナリノンを経口投与すると、有意の腫瘍増殖の抑制と細胞分化を認めた。3.口腔扁平上皮癌及び顎下腺腺様嚢胞癌にベスナリノンを投与して著効を認めた。4.TYS細胞をベスナリノンで処理して誘導されるTSC-22遺伝子をクローニングして、その特性を解析した。(1)TSC-22のdown-regulationは、in vitro, in vivoにおける唾液腺癌細胞の増殖を著明に促進した。一方、TSC-22のup-regulationはヒト唾液腺癌細胞の足場非依存性増殖を有意に抑制した。(2)TYS細胞において、TSC-22タンパクの過剰発現は、抗癌剤(5-FU, CDDP)及び放射線の感受性を増強し、アポトーシスを誘導した。(3)ヒトTSC-22遺伝子は、約6Kdで3つのエキソンから構成されていた。転写開始点はTATA box様配列より、7bp下流と29bp下流に存在することを明らかにした。TSC-22プロモーター領域には、NF-κB, MyoD, AP-1,PU, C/EBP, p53,c-Myb, Sp1,NF1,Smadなどの反応性領域の存在を明らかにした。5.TYS細胞において、ベスナリノンはp21^<Waf1>遺伝子のプロモーター領域のSp1-1およびSp1-2サイトに転写因子Sp1或いはSp3が結合して、p21^<Waf1>遺伝子の転写を活性化することを明らかにした。6.TYS細胞をベスナリノンで処理するとhistone hyperacetylationを誘導することを明らかにした。
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