研究概要 |
心不全発症早期の心筋収縮力制御機構の変化とその分子的機序を明らかにすることを目的として以下の3点を検討した。(1)ラット冠状動脈結紮による梗塞モデルを作成し、顕著な心肥大を呈する結紮3週間後に左心室機能およびβ_1-adrenaline受容体刺激に対する反応性を調べたところいずれも結紮(MI)群ではコントロール(Sham-operated)群に比較して減弱していた。その後、左心室および右心室から心室筋細胞を単離し、フィールド刺激に伴う細胞内Ca^<2+>トランジェント、L型Ca^<2+>チャネル機能および活動電位波形の変化を検討したところ、MI群ではコントロール群に比較してCa^<2+>トランジェントが増大していた。特にMI群の右心室筋細胞ではCa^<2+>ハンドリング系の亢進が見られた。しかしながら、単離心室筋細胞のL型Ca^<2+>チャネルの機能およびβ_1-adrenaline受容体刺激に対する反応性は左右心室ともMI群とコントロール群で全く差がなかった。現在、Ca^<2+>トランジェントの変化と活動電位波形の連関を検討している。さらに、Ca^<2+>ハンドリングに関わるタンパク(SR Ca^<2+>-ATPase,phopholamban,Na^+-Ca^<2+>exchanger,ryanodine receptor,calsequestrin)の発現レベルをWestern-blotting法により検討している。(2)L型Ca^<2+>チャネル機能の細胞骨格を介した制御機構:モルモット心室筋細胞においてアクチンフィラメントの脱重合によりL型Ca^<2+>チャネル電離流の電位依存性不活性化およびrun-downが促進され、さらに細胞内Ca^<2+>による不活性化が促進された。よってアクチンフィラメントを介して心筋L型Ca^<2+>チャネルの不活性化が制御されることを明らかにした(Biophysical Journal(1999)76,No.1,A347、論文投稿中)。さらに、微小管重合剤で心筋L型Ca^<2+>チャネルのCa^<2+>依存性不活性化が抑制され、同時にCa^<2+>チャネル活性化によるリアノジン受容体からのCa^<2+>依存性Ca^<2+>放出の効率が低下することを見いだした(第101回薬理学会関東部会)。[3]ラット電位依存性L型Ca^<2+>チャネルα_<1C>サブユニットの細胞内カルボキシル末端ドメインと相互作用するタンパクを酵母two-hybridスクリーニング法で検索した結果、陽性反応を示すタンパクを見いだした。現在、その相互作用の機能的意義を検討中である。
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