研究概要 |
平成10年度より、遺伝子転写制御が薬物の新しい作用点になることを明らかにするため、神経分化・記憶に関わる神経遺伝子の新規転写制御因子のクローニングとそれに対する神経作動薬による調節機構の解明を行っている。平成13年度はNPY遺伝子プロモーター上の転写因子としてNDF1とSTAT3の同定を行い、またNPY受容体遺伝子Y_1, Y_2, Y_5の発現調節の研究を行った。 1.NPY遺伝子プロモーターのLeptinによる活性化機構の解析 食欲の中枢調節に関与するNPYは、末梢からのadipostat signalであるLeptinによってその発現が抑制される。NPY遺伝子のLeptin転写調節機構を解析するため、同遺伝子のプロモーター領域をレポーター遺伝子の上流に挿入し、種々の神経系培養細胞に導入し、Leptinによって刺激した。その結果、NPYプロモーターはLeptinによって直接的には活性化されることが明らかとなった。dominant-negativeなJAK1, JAK2及びSTATの導入によってその活性化が抑制されたことから、この活性化にはJAK-STAT系が関与していることが示された。 2.NDF1のZebrafishホモログのクローニング NPYの発現および神経分化に関与し、PC12細胞よりクローニングされた転写因子NDF1の機能を解析するため、受精卵へのマイクロインジェクションにより遺伝子の過剰発現並びに機能的ノックアウトが容易であるZebrafish系において、NDF1ホモログのクローニングを行い、解析した。最終的にホモログはクローニングできなかった。 3.絶食による脳内NPY受容体サブタイプの発現変化 絶食によってNPY遺伝子の視床下部における発現が増加する事が知られている。今回我々はY_1, Y_2, Y_5, NPY受容体サブタイプの遺伝子発現における絶食による変化をノーザンブロッティング及びin situハイブリダイゼーションによって検討した。その結果、絶食によってNPY発現が増加する視床下部では、いずれの受容体サブタイプの発現も変化しなかったのに対し、NPY遺伝子発現が変動しない海馬において、各々Y_1, Y_2遺伝子の発現が減少した。
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