1.美術品が曝される温湿度変化の実データ収集と試作型マイクロクライメイトボックスの性能評価 昨年度に続き作品貸出の際に、輸送時及び展示期間に作品が曝される温湿度環境の連続計測と、試作型マイクロクライメイトボックスの性能評価を行った。その中で既存の額縁を使用して貸出を行う場合と、寸法の大きい作品を貸出す場合に、試作型ボックスを用いる上で特別な配慮を要することが確認された。昨年度の貸出では貸出用に額縁を新調したためボックスにあわせた大きさの額縁を制作できたが、既存の額縁を使用する場合は額縁にあうようにボックスの仕様を検討する必要と、場合によっては額縁を多少改造する必要が生じる。また寸法が大きい作品ではそれにあった大きさのボックス用材料が入手できない場合があり、代替材料で同等の性能を得られるか検討が必要となる。このようにマイクロクライメイトボックスを開発する上で、基本の構造を決定すると同時に、作品個々の性格に合わせたバリエーションも検討する必要があることが確認された。 また昨年度懸念された輸送箱の密閉度とシーズニング時間の問題は、温湿度データロガーのセンサー固定法に起因する測定誤差の問題であり、シーズニングは通常の24時間で問題ないことが確認された。 2.温湿度変化に伴い絵画作品におこる変化の計測 昨年度導入した大型恒温恒湿装置内で様々な材料技法による絵画作品に生じる形状等の変化を計測するために、試料の固定具と、測定器具の固定と試料内の測定箇所を移動させるためのXZステージの自作を試みたが、測定及び移動の誤差が大きいことが判明した。そのため仕様の再検討を行い、設計・制作を依頼してこれらを導入した。また変位計、水分計等の測定装置を導入し、恒温恒湿装置内での計測を行う上での効率よいデータ収集法の検討と、予備実験を行った。これらを用いて来年度よりデータの収集を行う。
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