研究課題
我が国の金融機関はBIS合意に基づき、欧米で事実上の標準になっているバリュー・アット・リスク(VAR)の模倣もしくはマイナー・チェンジ・モデルにより金融機関の内部モデルを構築していることが多い。一方で、現物市場のリスク尺度と派生証券市場のリスク尺度が異なることへの不安、非線形構造を持つ資産価格変動の理論値と現実の差に関する不安、また最大損失予測の過小評価に対する将来的不安などをも同時に抱え、欧米の模倣技術からの脱却と独自の改良モデルの必要性を痛感していることもまた現実である。本プロジェクトでは計測可能な金融リスクの中で、マーケット・リスク、流動性リスク、信用リスクという社会的要請の強い金融リスクにある程度焦点を絞り込みながら、世界的にも未解決な上記の問題に挑戦し、我が国金融技術の世界的レベルへのキャッチアップと問題解決を目指した。平成12年度は、ほぼ整備を終えた分析環境とデータベース、また新規に購入したデータにより、前年度までの予備的な研究成果を一層発展させるとともに、信用リスク、流動性リスクの長期的な課題を解決するための調査研究を行った。各研究分担者の研究成果は一部既に学会、研究会発表、雑誌投稿、単行本等で公開され、社会還元されているが、研究者の独自性を確保しつつ、プロジェクトの全体的な統一や整合性にも注力しつつ研究を推進した。