研究概要 |
原子の質量に依存する格子振動が重要な役割を果たしている現象、すなわち、超イオン伝導体におけるイオンの拡散(移動)、熱電材料における熱拡散、強誘電体の相転移などの現象に着目し、同位体の含有率を制御してこれらの現象に及ぼす同位体効果を明らかにする。さらにその結果に基づいて、機能の飛躍的向上の為の指針を明らかにすることを目的として実験を行った。 超イオン伝導体としては、現在のところLiイオン伝導率が一番高い物質である(La,Li)_<1-x>Sr_xTiO_3のLiを^6Liと^7Liに濃縮して、イオン伝導率変化を調べた。^6Li濃縮試料の伝導率は^7Liに比べて約1.5倍上昇し、古典論の1.08に比べて非常に大きく量子論的効果を考える必要がある。さらにホウ酸リチウムガラスのガラス転移点および電気伝導度に及ぼす^6Li/^7Liおよび^<10>B/^<11>Bの同位体効果も調べた。ガラス転移点の同位体存在比による変化はほとんど見られなかった。しかしながら、^6Liと^7Li濃縮試料の電気伝導度の比は500Kで約2.2となり、古典論からの予想値1.1よりも大きかった。一方、^<10>B/^<11>Bの電気伝導度の比は、500Kで1.4となり、やはり古典論よりも大きかった。拡散しているLiイオン同志の強い相関とLiイオン拡散経路のB-0網目構造の緩和振動が同位体効果に大きく影響しているものと推定される。 強誘電体の強誘電性一常誘電性相転移温度に及ぼす同位体効果も調べた。PbTiO_3,BaTiO_3,SrTiO_3いずれもPbまたはTiの同位体の質量を増すと転移温度が大きく低下することが明らかになった。この場合も古典論からの予測と逆であり量子論的効果を考慮する必要があるものと考えている。
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