研究概要 |
(1) テトラサイクリン排出蛋白Tet(B)をモデルとした異物排出蛋白分子構造解析: 本年度は、Tct(A)を構成する全400アミノ酸残基をすべて一つずつCys残基に置換したCys走査変異体の完全セットをついに完成し、SH特異的修飾試薬NEMとの反応性を分子全域に渡って測定した。その結果、すべての膜貫通領域の範囲が正確に決定できた。また、12本の膜貫通セグメントのうち、4本(3、6,9,12番目)は疎水性環境の中に完全に埋もれていることがわかった。これに対し、2,5,8,11の4本はへリックスの片面が親水性チャネルに面していること、1,4,7.10の4本はN末端またはC末端の半分のみ片側がチャネルに面していることが明らかになった。分子は完全な4回対称性を示した。さらに、複数導入したCys残基の架橋実験から、分子のN末端とc末端は互いに空間的に近接していること、すなわち、閉環状構造をしていることがわかった。 (2) マルチコンポーネント型排出蛋白AcrABの分子構造: AcrBは内在性膜蛋白である。変異導入によりCys-free AcrA蛋白を構築し、活性が保持されでいることを確かめた後、任意の位置にCys残基を導入し、膜透過性SH試薬NEMと不透過性SH試薬AMSの生菌体における拮抗的結合を測定することにより、膜貫通トポロジーを決定した。基本的に12回膜貫通構造であり、ペリプラズム側に2個の大きな膜表在性部位のあることが確かめられた。また、AcrAはAcrBと複合体を作り、分子の大部分がペリプラズム側にある表在性蛋白であることが、免疫共沈法と、Cys変異体のSH試薬による修飾で確かめられた。N末端は細胞質側に露出しており、N末端に近い部分で一回だけ膜を貫通していた。
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