研究概要 |
(1)Tet(B)蛋白立体構造モデルに基づく蛋白工学的解析と分子構造のリファインメント 本年度はテトラサイクリン排出蛋白Cys走査変異体を用いて基質輸送経路の検索を行なった。基質であるテトラサイクリン存在下におけるSH基特異的修飾試薬N-ethylmaleimideとの反応性から、膜貫通へリックス1,2および5が基質輸送経路を形成していることが示された。また、二重Cys変異体を用いて分子内S-S架橋実験を行ない、膜貫通へリックスの立体配置について解析した。その結果、ペリプラズム側では膜貫通へリックス1,2および11が近接することが判明した。 (2)マルチコンポーネント型排出蛋白の分子構造決定と輸送機構の解析 大腸菌の多剤耐性マルチコンポーネント型排出蛋白であるAcrBについて走査Cys変異体、および部分欠失変異体を構築し、N-ethylmaleimideによる修飾実験を行った。その結果、12回膜貫通型であること、膜貫通領域のペリプラズム側が広範囲にわたってループ領域によりマスクされていることが判明した。 (3)MRP,cMOATの分子構造解析 動物細胞の多剤耐性遺伝子産物、cMOATの培養細胞系での発現と、蛍光基質を用いた基質輸送活性測定系を確立した。また、cMOATの部位特異的変異体を構築し輸送活性の測定を行なった。その結果、膜貫通へリックス16のアルギニン残基が輸送活性に必須であることが判明した。 (4)マウス脳に発現する未知の排出蛋白のクローニング 神経細胞に発現する生理活性物質輸送体を検索する目的で、マウス脳RNAよりRT-PCRおよびcross hybridizationにより新規ABCトランスポーターの検索を行なった。その結果、5つの新規遺伝子を発見した。
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