哺乳類テロメレース制御機構の分子生物学的研究

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10308031
• 研究種目: 基盤研究(A)
• 研究機関: 東京工業大学
• 研究代表者: 石川 冬木 東京工業大学, 生命理工学部, 教授 (30184493)
• キーワード: テロメレース / TERT / mvc / MZF2

研究概要

テロメレース酵素活性は、触媒サブユニットTERTと鋳型RNA、TERCの2者からなるコアエンザイムによりもたらされる。さまざまな種類の細胞におけるテロメレース活性の有無は、主としてTERT遺伝子の発現の有無により決定される。そこで、今年度の本研究では、ヒトおよびマウスTERT遺伝子のプロモーター領域の解析を行った。ヒト、マウスTERT遺伝子転写開始点を含むゲノムクローンを同定し、その塩基配列を約2kbにわたって行った。その結果、ヒトとマウスでは、ともにGC含量が高いという共通点はあるものの、配列自身は大きく異なることが分かった。ヒト遺伝子上流1kbから100bpまでのさまざまな長さをもつ配列をルシフェラーゼ遺伝子に結合させ、K562および293細胞に一過性に遺伝子導入を行い、それぞれのプロモーター活性を測定した。また、同時に、さまざまな転写因子の発現ベクターを共発現させ、それらのトランス因子のヒトTERTプロモーターに与える影響を検討した。その結果、少なくとも、このin vitroの系においては、mycは、TERTのアクチベーターとし、MZF2はレプレッサーとして作用することが明らかとなった。ヒトTERTは、転写開始点上流およびエクソン1にmyc結合配列がそれぞれ一つずつ存在する。これらの塩基配列に点突然変異を導入したものでは、mycによる転写活性化は認められなかったので、この領域が活性化に関与していることが明らかとなった。

研究成果

• [文献書誌] Nakayama,J.: "Telomerase activation by the catalytic component gene TRT in human primary fibroblasts and hepatocellular carcinomas." Nature Genetics. 18. 65-68 (1998)
• [文献書誌] Hatakeyama,S.: "The jumping translocation at 1q21 involves shortened telomeres." Blood. 20. 203-206 (1998)
• [文献書誌] Ishikawa,F.: "Research analysis:FISH goes with the flow." Nature Biotechnology. 16. 723-724 (1998)
• [文献書誌] Naito,T.: "Circular chromosome formation in a fission yeast mutant defective in two ATM-homologues" Nature Genetics. 20. 203-206 (1998)
• [文献書誌] Yamada,M.: "Y'-Helpl,a DNA helicase encoded by the yeast subtelomeric Y'element is induced in survivors defective for telomerase." J.Biol.Chem.273. 33360-33366 (1998)
• [文献書誌] Yasui,W.: "Expression of telomerase catalytic component,telomerase reverse transcriptase,in human gastric carcinomas." Jpn.J.Cancer Res.(Gann). 89. 1099-1103 (1998)
• [文献書誌] Hatakeyama,S.: "JTB,a novel membrane protein gene at 1q21 rearranged in a jumping translocation." Oncogene. (in press). (1999)
• [文献書誌] Tahara,H.: "Immuno-histochemical detection of human telomerase catalytic component,hTERT,in human colorectal tumor and non-tumor tissue sections." Oncogene. (in press). (1999)