研究概要 |
プラナリア類には、同一種内に生殖器官を形成せず分裂のみで増殖する無性系統と雌雄同体の生殖器官を有し有性生殖を行う有性系統をあわせもつものがあり、無性個体に有性個体を投餌すると、性が誘導されることが知られている。 我々は、無性個体と有性個体の両系統が確認されているリュウキュウナミウズムシの無性個体に、有性生殖のみを行うイズミオオウズムシを6週間、毎日投餌することによって性誘導系を確立した。性誘導個体の形態観察から、性誘導現象を5つのステージに分類することができた。投餌約3日で、外部から確認できるほどの一対の卵巣が、脳の直下に発達してくる(Stage1)。投餌1週間で卵母細胞が分化し(Stage2)、投餌2週間後に多数の精巣原基が現れ(Stage3)、2〜3週の間に生殖孔が開き、卵黄腺の原基が多数現れる(Stage4)。投餌5週間目には、それぞれの生殖器官が充分に発達し、有性個体としての体制が整う(Stage5)。Stage5の性誘導個体はその後交接を行うようになり、その2週間後には卵殻を産みはじめる。 この性誘導現象ではstage2と3の間に外部から投与される有性生殖誘導因子がなければ、性を維持することができない可逆的状態から、性を維持することができる不可逆的状態に変わる有性生殖回避不能点が存在した。また生殖様式を転換したプラナリアは無性生殖を停止し、有性生殖のみを行うが、この無性生殖停止点はstage4と5の間に存在した。 有性生殖回避不能点を越える性誘導活性は、イズミオオウズムシのホモジネートを16,000g、30分間遠心した後の上清画分に存在し、100℃、5分間の熱処理によってこの活性は著しく減少した。目下、有性生殖誘導因子を精製中である。
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