研究概要 |
プラナリア類には、同一種内に生殖器官を形成せず分裂のみで増殖する無性系統と雌雄同体の生殖器官を有し有性生殖を行う有性系統をあわせもつものがあり、無性個体に有性個体を投餌すると、性が誘導されることが知られている。我々は、無性個体と有性個体の両系統が確認されているリュウキュウナミウズムシの無性個体に、有性生殖のみを行うイズミオオウズムシを6週間、毎日投餌することによって性誘導系を確立した。性誘導個体の形態観察から、性誘導現象を5つのステージに分類することができた。この性誘導現象では外部から投与される有性生殖誘導因子がなければ、性を維持することができない可逆状態から、性を維持することができる不可逆的状態に変わる有性生殖回避不能点が存在した。イズミオオウズムシのホモジネート上清(16,000gで30分遠心後、その上清を100,000gで1時間遠心して得られた上清)をリュウキュウナミウズムシ無性系クローンOH株に投餌し、有性生殖誘導活性を調べたところ、分子量10kDa以下の画分に活性が見られた。その活性は100℃、5分間の熱処理によって著しく減少したが、卵巣が発達を誘導する活性は残存した。また、その上清画分にプロナーゼ処理と熱処理を施した場合、誘導する活性もほとんど失われた。これらの結果から、少なくとも卵巣を誘導する因子は分子量10kDa以下のペプチドと考えられる。現在、有性生殖誘導因子の精製を続行中である。また、有性生殖誘導因子による性誘導に伴い発現する遺伝子カスケードの解明を行うために、有性生殖誘導に伴い発現する遺伝子を単離した。得られたクローンは卵黄腺特異的に発現し、分子量が約70kDaのタンパク質をコードしていた。
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