「嗅細胞におけるアドレナリンの効果」:生体から単離した嗅細胞にパッチクランプ法を適用し、電流注入に対する細胞応答特性を観察しながら、アドレナリンの効果を調べた。その結果、アドレナリン存在下で、細胞の応答コントラストが増大することがわかった。さらに、その機構はβアドレナリンリセプターを介し、cAMP依存性リン酸化過程によってNaチャネルが増強され、Caチャネルが抑制される効果によって制御されていることがわかった。 「味細胞の苦み感受性イオンチャネルの発見」:従来から、脊椎動物の味細胞苦み信号変換過程は、cAMPによって仲介されるセカンドメッセンジャー系によって仲介されると考えられてきた。本実験では、細胞から剥離した微小膜標本(inside-out patch clamp法)を用い、細胞内外を充分に環流し、すべての水溶性分子を洗い流した状態で、苦み分子(キニーネ、デナトニウム)を膜標本に添加し、細胞膜のイオンチャネル電流を記録したところ、長時間にわたり安定な陽イオンチャネル活動が記録された。この実験結果によって、苦み信号変換には、苦み分子が直接ゲートする陽イオンチャネルが関与することが明らかとなった。
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