強磁場による生成内反応制御に関する研究

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10308037
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 上野 照剛 東京大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (00037988)
• 研究分担者: 岩坂 正和 東京大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (90243922) ; 安藤 譲二 東京大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (20159528) ; 塩川 光一郎 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (20037295)
• キーワード: 強磁場 / 8字コイル / パルス強磁場 / 酸素濃度 / 磁場配向 / 磁気刺激 / コラーゲン / 細胞配向

研究概要

本年度は、強磁場が実験動物(ラットおよびマウス)の酸素代謝や骨形成に及ぼす影響を調べるとともに、細胞・分子の磁場配向による細胞機能変化と再生医工学的応用の可能性についても研究を進めた結果、以下のような成果を得ることができた。
1.ラット体内の酸素濃度を赤外光吸収による無侵襲酸素モニタで測定し、最大8テスラの直流磁場が循環系の酸素運搬に与える影響を調べた結果、磁場曝露中にオキシヘモグロビン濃度が上昇し、デオキシヘモグロビンの濃度の減少する現象を観測できた。また、磁場中でのラットの微小循環と体温および湿度測定を行ったが、体温および湿度が減少し微小循環系も変化する結果も得た。マウスの足部の仮骨形成に対し、強磁場が促進効果を有することを観測した。
2.血液などの生体コロイド溶液に対する強磁場効果を近赤外分光法を用いて調べた結果、赤血球サスペンションなどのレーリー散乱光強度が磁場中で顕著に変化する現象を見いだした。さらに赤血球の凝集が強磁場中で促進され、血沈が進行しやすくなることを確認した。
3.細胞機能の磁場制御法に関し、コラーゲンとフィブリン等の蛋白質繊維が磁場中で特定方向に配向する現象を用いて、細胞機能の磁場制御のための実験を行った。その結果、骨芽細胞や血管内皮細胞の配向性を制御することに成功した。また、骨芽細胞の石灰化が磁場配向により促進されることを確認した。アフリカツメガエルの卵割異常や細胞内イオン濃度について検討を進めたが、これまでのところ顕著な磁場影響は観測されていない。
4.神経細胞の成長が、コラーゲンの磁場配向によって促進される結果を得ることができた。また、虚血状態のラットの脳に対し、8字コイルによる磁気刺激および電気刺激を与えるための脳虚血モデルを用いた磁場曝露実験系を構築した。

研究成果

• [文献書誌] 上野照剛、岩坂正和: "生物に関連する磁界効果と医療応用"電気学会論文誌(A). (in press). (2000)
• [文献書誌] S. Ueno: "Biomagnetic Approaches to Studying Brain"IEEE Engineering in Medicine and Biology. May/June. 108-120 (1999)
• [文献書誌] H. Kamei, et al. & S. Ueno: "Neuronal Current Distribution Imaging Using Magnetic Resonance"IEEE Transactions on Magnetics. 35・5. 4109-4111 (1999)
• [文献書誌] Y. Yukawa, N. Iriguchi, S. Ueno: "Impedance Magnetic Resonance Imaging with External AC Field Added to Main Static Field"IEEE Transactions on Magnetics. 35・5. 4121-4123 (1999)
• [文献書誌] S. Uchida, K. Iramina, et al.: "High Resolution Magnetocardiography for The Study of Dynamic Propagation of Excitation State in Rat Cardiac Muscle"IEEE Transactions on Magnetics. 35・5. 4124-4126 (1999)
• [文献書誌] K. Iramina, H. Kamei, et al.: "Effects of Stimulus Intensity on fMRI and MEG in Somotosensory Cortex Using Electrical Stimulation"IEEE Transactions on Magnetics. 35・5. 4106-4108 (1999)
• [文献書誌] H. Kotani, M. Iwasaka, S. Ueno: "Magnetic Orientation of Collagen amd Bone Mixture"Journal of Applied Physics. (in press). (2000)
• [文献書誌] 岩坂正和、小谷博子、上野照剛: "強磁場下での付着細胞の磁場配向"Space Utilization Research. 16. 115-117 (2000)
• [文献書誌] S.Ichioka,M.Minegishi,M.Iwasaka,et al.: "High-Intensity Static Magnetic Fields Modulate Skin Microcirculation and Temperature In Vivo"Bioelectromagnetics. 20. 1-6 (1999)
• [文献書誌] 上野照剛、岩坂正和: "生物に関連する磁界効果と医療応用"電気学会論文誌(A). (in press). (2000)
• [文献書誌] S. Ueno and M. Iwasaka: "Electricity and Magnetism in Biology and Medicine, F. Bersani (eds)"Kluwer Academic / Plenum Publishers. 996(205-210) (1999)
• [文献書誌] M. Iwasaka and S. Ueno: "Electricity and Magnetism in Biology and Medicine,F.Bersani (eds)"Kluwer Academic / Plenum Publishers. 996(275-278) (1999)
• [文献書誌] M. Iwasaka and S. Ueno: "Electricity and Magnetism in Biology and Medicine,F.Bersani (eds)"Kluwer Academic / Plenum Publishers. 996(271-274) (1999)