研究課題
イネ科植物では、これまでに、イネとトウモロコシについて葉緑体ゲノムの全構造が決定されているが、コムギではまだ全構造の決定が行われていない。そこで、本研究班で、2年間にパンコムギ葉緑体ゲノムの全構造を決定することにした。そのため、前年度に必要クローンを班員に配布し、本年4月から各分担者が割り当てられた領域の塩基配列の決定に着手した。そして、5月29、30日の両日、国立遺伝学研究所において第1回の研究打合せ会を行い、各自が研究の進展状況を報告するとともに、問題点の解決法について相談した。次いで、6月19、20日の両日、福井県立大学において第2回目の研究打合せ会を開催し、各自の成果を報告するとともに、8月にカナダで開かれる第9回国際コムギ遺伝学シンポジウムにおいて、得られた成果をまとめて報告するための方法について相談した。幸い研究が極めて順調に進行し、7月下旬には、一部領域で2本鎖のうちの一方についてしか配列が決定できなかったし、隣接する断片の接続部の塩基配列の確認も不十分ではあったが、一応、全構造について予報的報告ができるまでになった。すなわち、パンコムギ葉緑体ゲノムは134,523塩基対の環状分子であり、4種rRNA遺伝子を各2個、33個のtRNA遺伝子(うち、6個は重複、4個は偽遺伝子)、77個の構造遺伝子(うち2個が重複、1個はトランススプライスされる遺伝子、8個は偽遺伝子)、8個のORF(うち5個が重複)を含むことがわかった。そこで、8月2日〜7日にカナダのサスカチュワン大学で開催された第9回国際コムギ遺伝学シンポジウムにおいて、荻原が代表者になって、以上の結果を骨子とする予報的報告を行った。
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