研究課題
基盤研究(A)
本研究で目指しているのは、これまでに比べて約1万倍の大強度高輝度パイオン、ミューオン、ニュートリノなどの2次ビームを得られる装置を建設することである。これは、位相空間回転ビーム(愛称PRISM)と名付けられ、細かくは、高磁場の超伝導磁石を使ったパイオン捕獲と、高周波加速空洞を使ったビーム位相回転から構成される。前者に関しては、次のようにまとめられる。まず、中心磁場が10テスラで有効内径10cmという高磁場超伝導磁石を試作した。この磁石は1つのNb3Snのコイルと2つのNbTiのコイルからなる。まず、クイオスタットを製作しこの2つのNbTiのコイルをその中に取り付けた。また、この超伝導磁石は放射線環境下で動作させられるが、従来のような低温ヘリウム液体を冷凍機から超伝導磁石に供給するような方法では対応できないので、最近開発された直冷型小型冷凍機を使用した。後者に関しては、次のようにまとめられる。位相空間回転を行う高周波加速空胴に求められる、高電場勾配を実現させるフェライトコアについて測定を行った。測定に使用したフェライトコアは、コア材そのものの特性を調べるためのサンプルとしての小さなトロイダルコアと高周波空胴評価用実サイズのフェライトコアのブロックの2種類である。両方のコアの測定から、SY-25コアにおいては、10MHz以下でのシャント抵抗が非常に大きく、10MHz以上では、急速にシャント抵抗が低下していることがわかった。これらの測定結果から、2〜8MHzの範囲で、低損失でかつ、高シャント抵抗の特性が得られることがわかり、高勾配加速空胴実現の目処がついたと言える。