研究課題/領域番号 |
10354003
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中西 彊 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 教授 (40022735)
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研究分担者 |
堀中 博道 大阪府立大学, 工学部, 教授 (60137239)
吉岡 正和 高エネルギー加速器研究機構, 加速器施設, 教授 (50107463)
小早川 久 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 教授 (50022611)
加藤 俊宏 大同特殊鋼株式会社, 技術開発研究所, 主任研究員
馬場 寿夫 NEC, 基礎研究所, 研究部長(研究職)
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キーワード | スピン / 偏極度 / 偏極電子源 / 超格子構造半導体 / レーザー励起 / フォトカソード / 電子銃 / リニアコライダー |
研究概要 |
現在、KEKを中心に準備研究が進行中の電子・陽電子リニアコライダーで使用しうる偏極電子ビーム(1ナノ秒に10×10^<10>個の電子を詰めたバンチを2.8ナノ秒間隔で約100個連ねたマルチバンチビーム)を生成する研究を進め、以下に箇条書きにしたように、この目標にかなり近づくことができた成果を挙げることができた。 (1) GaAs-GaAsP 超格子構造半導体フォトカソードを名古屋大学工学研究科にて作成し、偏極度【greater than or equal】85%、量子効率【greater than or equal】0.4%が得られることを確認した。これは従来のInGaAs-AlGaAs系をしのぐ性能である。 (2)上記フォトカソードを、50keV偏極電子銃に装着しダブルパンチ・レーザー光(幅1ナノ秒、間隔2.8ナノ秒)で励起することにより、表面電荷制限を受けることなく、空間電荷制限値である電荷量(0.6×10^<10>電子/バンチ)を生成できることを確認した。またInGaAs-AlGaAs系超格子構造半導体でも同様の結果を得た。 (3)将来有望と見なされる偏極RF-gunの実現に挑むため、Cu表面からの電界放出暗電流の削減に取り組み、超精密旋盤加工後に生ずる酸化膜(Cu_2O、CuO、Cu(OH)_2)のうち後者2つが暗電流を増加させるとの見解に達した。Cu_2Oはp型、CuOは真性型の半導体であることの関連性が興味深く、さらに探求したい。 (4)世界で初めて「2光子励起により偏極電子を生成する方法」を試験し、GaAs結晶を1064nm波長のYVO_3レーザーで励起したときのフォトルミネッセンス光の円偏光度の観測値(約26%)から、励起直後の電子偏極度を推定したところ、約86%であることが確認され、この方法の有効性を証明できた。
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