研究分担者 |
木下 正生 日立造船(株), 技術研究所, 主管研究員
一色 浩 日立造船(株), 技術研究所, 主席研究員
寺田 幸博 日立造船(株), 技術研究所, 主管研究員
柿本 英司 日立造船(株), 技術研究所, 研究員
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研究概要 |
昨年度の3月に油壺で実施された実験的観測が順調に実施されたことを受け,本年度は取得されたデータの解析を行い,次の段階に向けての問題点を洗い出すこととした.まず,ブイ系については,スパー型ブイは短周期の風波を除去することに成功したが,サポートブイを必要とするため外洋での長期安定な設置には困難が予想される結果となった.また,特定小電力無線は約900mという短距離ではあったが,極めて安定したデータ伝送を実現した.次のステップでも同方式が主力であるが,10km以上という遠海での観測では他の方式が必要であることも明らかとなった.データの解析に関しては,今回はGPS受信機に搭載されているRTK-GPS方式を使用し,安定してデータのモニターを行うことに成功した.以上,今回の実験は一応の成功を見たものの,より遠海での安定した長期観測のためには一層の機能強化を図る必要のあることが明らかとなった. 次に,得られたデータを検討し,実際に津波が到来した場合に検知が可能であるかどうかを検討した.1秒サンプリングで海面高を推定したが,数十秒程度のフィルターを操作することにより風波はほとんど除かれることが判明した.一般に津波はこれよりも長周期が卓越するため適当なフィルター操作により判別は可能であろうとの結論が得られた.また,長期的な傾向については近傍に設置されている油壺験潮場の潮位記録と比較し,大変良好な一致を見ることが出来た.最後に,実際に得られた津波データを今回得られた海面高変化記録と重ね合わせ,元の記録と周波数スペクトル上で比較したところ,津波が風波と明らかに分別できることが判明した.なお,実際の津波はより多くの形態をとると考えられるので,より詳細な検討が必要であろう. 以上を要するに,本研究ではRTK-GPSを用いたGPS津波計は今後の展開があれば実用化が可能である,との結論に至った.
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