研究概要 |
本研究の目的は,外部量子効率が40%を越えるような超高効率の紫外・青色・緑色・白色LEDを開発することにある。そのためには,実際のLEDの中で生じているミクロスコピックな光学遷移過程を明らかにし,それをデバイス設計にフィードバックすることが不可欠である。LEDの輻射,非輻射再結合過程を時間―空間レベルで分解して解析し,それをデバイス設計にフィードバックさせて評価を進めて行くことにより所期の目的が達成できるものと期待している。 平成11年度は以下のようなことが明らかにされた。 1.3.波長266nm,パルス幅1.5psといった紫外短パルスレーザを光学顕微鏡下において直径数μmで集光することにより試料からの発光パターンを画像化したり空間一時間分解で分光するシステムを開発し,この装置を用いて,ELO-GaNの評価を行った。貫通転位密度が10^6cm^<-2>(wing領域:幅8μm)と10^8cm^<-2>(window領域:幅4μm)の領域での時間分解フォトルミネッセンス測定を行った。その結果,貫通転位密度が大きい領域の方の発光減衰寿命が若干短くなることが示された。しかし,2桁という転位密度の違いほどの大きな差は見られず非輻射再結合過程が点欠陥等の他の起源により律速されていることが明らかとなった。 2.3次非線形分光法の一種である過渡グレーティング法を用いて実験を行った。その結果,InGaN量子井戸におけるキャリアの非輻射緩和過程に起因する熱の検出に成功した。さらに,非輻射再結合中心が高密度なキャリアによって飽和される様子が観測できた。非輻射再結合による非線形信号を精密に評価することにより,窒化物半導体における非輻射再結合中心の起源に関する情報が得られるものと期待している。
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