研究概要 |
本研究の目的は,外部量子効率が40%を越えるような超高効率の紫外・青色・緑色・白色LEDを開発することにある。特に、近年の低転位化技術によって作製されたELOG(epitaxial lateral overgrowth)およびABLEG(air-bridged lateral epitaxial growth)-窒化物半導体は、試料中に数ミクロン幅のストライプで貫通転位密度(DD)の高いseed領域および低いwing領域が交互に形成されるため、マクロスコピックな転位と輻射・非輻射過程の相関を明らかにする上で有用な構造である。本年度は、同一条件で成長させたABLEG-GaNおよびABLEG-InGaN(In:1%,2%および3%)の各試料に対する発光ダイナミクスの実験を詳細に行った。その結果、In組成の増加とともに(1)発光効率が飛躍的に増加すること、(2)GaNで顕著だったダブルイクスポーネンシャル(二つの減寿命を持つ)減衰特性の早い寿命成分が徐々に弱くなりIn:3%の試料では完全なシングルイクスポーネンシャル減衰となることが分かった。さらに光学顕微鏡下にてseed領域(DD:10^9cm^<-2>)およびwing領域(DD:10^6cm^<-2>)を選択光励起実験を行い、(3)結晶性の高いwing領域の方が発光強度が大きく(1.4〜2.5倍、In濃度とともに大きくなる)なるが貫通転位密度ほどの差は見られないこと、(4)In添加とともに両領域とも発光強度が大きくなりIn:3%のInGaN試料のwing領域ではGaNのwing領域よりも5倍も発光強度が大きくなることが分かった。選択励起では、励起スポット内に平均して、seed領域で40個、wing領域で0.04個(したがって0個)の貫通転位を含んでいる。このことにより、InGaN半導体の室温における再結合過程は、マクロスコピックな転位をゼロにしても点欠陥的な(すなわちナノスコピックな)非輻射再結合中心(NRC)によって律速されること、数%程度のIn微量添加により点欠陥的な起源のNRCが低減されキャリア・励起子の拡散長が長くなっていることが明らかにされた。
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