研究概要 |
本研究は、平成8年度より基礎研究を進めてきたフィッシュボーン構造を用いたセンサ/アクチュエータ機構の実用レベルへの展開を目的とする。ここでフィッシュボーン構造とは,人間の蝸牛基底膜と等価な構造をシリコン基板上に平板振動構造として実現する,知能化マイクロフォンの基本構造を指す.本研究では,具体的な応用をターゲットとしてa)音声認識のための知能化マイクロフォン,b)適応的周波数補償を行う補聴器,を想定している.この目的に対する本年度の成果は,以下の通りである. 1) フィッシュボーン構造のエネルギー制御/周波数分解構造の理論的検証 フィッシュボーン構造の音圧エネルギーの伝搬や周波数分解機構について,理論的検討,SPICEシミュレーション,および有限要素シミュレーションを行い,プロトタイプ試作に必要な設計パラメータを導出した. 2) フィッシュボーン構造のマイクロマシニングによる試作 住友金属工業のプロセスを用い,シリコンウェハの上にフィッシュボーン構造を試作した.これは共振ビーム数29本,共振周波数・2kHz〜4kHzに設計し,振動検出のためフッ化ほう素によるピエゾ抵抗部を各ビームに組み込んだものである. 3) 試作品の検証 試作品に純音や楽音,音声を与え,周波数特性,振幅特性などの測定を行った.ほぼ理論通りの振動特性を得られたことが確認された.また補聴器への応用を目指して,試作品を利用し,電流加算による周波数特性可変フィルタを作成した.
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