研究概要 |
本年度はBaTiO_3薄膜の半導体化と(Ba,Sr)TiO_3成膜の組成制御性について研究を行った。 RFマグネトロンスパッタリング法による半導性BaTiO_3薄膜の成膜ではLaのドーピング濃度を種々変えたBaTiO_3焼結体をターゲットにして、MgO単結晶基板を用いて基板温度700℃、ガス圧5mtorrで成膜を行った。as-depo薄膜は絶縁体であり、La濃度に対して格子定数が一定またはやや増加する傾向を示した。この薄膜を空気中800℃で加熱処理したが、格子定数はLa全濃度に対して減少したが、ほぼ一定であり、絶縁体であった。これを1000℃、H_2(5%)-N_2中で再熱処理を行ったところ、La0〜3%の範囲で10^2Ω・cmまで抵抗が下がり、その後6%まではほぼ一定であった。これを加熱しながら抵抗を測定すると約400℃まではさらに抵抗が減少し、数Ω・cmになったが、さらに昇温すると逆に高抵抗になり、これを冷却しても元に戻らない。これから、La添加は半導化を促進してはいるが、原子価制御の機能を発揮しているとは考えにくい。 BaTiO_3薄膜をMOCVD法で(001)MgO基板上に800℃で成膜し、H_2/N_2=9/95の雰囲気で800-1350℃で熱処理を行っ た。BaとTiの組成比によって著しい変化を示した。Ti/(Ba+Ti)比が0.48-0.67でBaTiO_3単相のエピタキシャル薄膜が生成し、ほぼ量論組成で10Ω・cmの半導性を示したが、組成がこれからずれると絶縁体になった。 (Ba,Sr)TiO_3薄膜を合成するためのBaとSrの比率を自由に変化させる方法の開発を行った。原料は共にDPM系の液体原料を用いた。Sr原料は蒸気圧が高いので、気化器中で飽和しているのに対して、Ba原料の蒸気圧は低く、非平衡であった。このように気化器中の原料蒸気の状態が初めて判明し、これを用いてBa,Srの比を変える手法の開発が可能になりつつある。
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