研究概要 |
ピコ秒レーザーの開発については、今年度分布帰還型色素レーザーの開発を行った。その結果、50psのパルス幅を有する単色なレーザーが得られた。現在、発振段レーザー光の増幅装置及びレーザー波長の駆動装置の開発を行っている。一方、レーザー波長の絶対値を測定するウエーブメーターについても、調整を済ませ,現在実用できるようになっている。 ダイオキシンを測定するには、従来利用してきた質量分析装置の大幅な感度向上が必要である。そこで、イオンが飛行する軸と試料をジェットとして真空中に導入する軸を一致させる“同軸方式"の装置を開発した。これにより感度を従来より50倍程度改善することができた。一方、質量測定するフライトチューブを10分の1に短縮することにより、2桁感度を向上させた。一方、イオンの拡散を抑制するためのアインツェルレンズを設置することにより、2.7倍感度を向上させた。さらに、イオン信号をアナログではなく、デジタル的に計数する方法を採用することにより、7倍改善した。今後、さらに短パルスレーザーの利用などにより、高感度化を図る必要があると考えている。 本研究では、ポリ塩化ビニルを熱分解し、生成する有機物質を超音速分子ジェット分光法により分析した。その結果、予期に反して、クロルベンゼンなどの塩素系芳香族化合物は、全く検出されないことが判明した。そこで、ポリ塩化ビニルの代わりに塩素化ポリ塩化ビニル(ポリ塩化ビニリデン)を試料として用いたところ、クロルベンゼンの強いピークが観測された。したがって、触媒などが存在しない条件下では、ポリ塩化ビニルから塩素系芳香族化合物さらにはダイオキシン類化合物は、ほとんど生成しないと考えられる。本研究では、塩素化ポリ塩化ビニルの熱分解生成物から生成するジクロルベンゼンを、その異性体を区別しながらリアルタイム計測できることも確認した。
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