高温超伝導体として知られているReBa_2Cu_3O_<7-δ>(Re:希土類元素)セラミックスの線材に、室温で、ある値以上の電圧を印加すると、ホットスポット(線材の一部分のみが赤熱する現象)が発生する。本研究では、ホットスポットが創出する様々な機能物性の発現機構の解明と様々な応用への検討を行い、以下の知見を得た。 (1)ホットスポットの電流方向への移動機構を調査した。温度分布測定の結果、ホットスポットの移動は、酸化物イオン伝導に起因することが示唆された。 (2)超伝導特性に与えるホットスポットを利用した熱処理の効果を検討した。ホットスポットを線材上で移動させることによって、超伝導臨界電流密度が向上し、その有効性が示された。 (3)ホットスポット現象を利用した酸素センサを評価した。雰囲気酸素のセンシング特性は、従来のセンサに比べ、検出濃度範囲、検出感度、などの点で優れていることが分かった。このセンサは、構造が極めて単純であるため、広範囲の分野での応用が期待できる。 (4)(Ln_<1-x>Sr_x)(Co_<1-y>Fe_y)O_<3-δ>(Ln:希土類元素)の線材を対象に、ホットスポット現象の発現と酸素センサヘの応用を検討した。組成を制御することにより、各種用途に適したセンサの設計が可能であることが示唆された。 (5)ホットスポット現象を利用したデバイスの小型化を検討した。線材が短すぎると、良好な定電流特性が得られなくなることが分かった。デバイスの小型化には、材料の熱伝導率を低くすることが有効であることが分かった。 (6)低酸素分圧下でのホットスポットの挙動を調査した。ある値より低い酸素分圧下でホットスポットを発生させると、減衰振動電流が発生することを見出した。振動の周期と減衰の時定数は、印加電圧、酸素分圧、線材の断面積、雰囲気ガスの熱伝導率により制御できることから、超低周波発振デバイスの実現の可能性が見出された。
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