研究概要 |
トランスジェニック(Tg)家畜を広く利用するためには、Tg動物の作出効率を向上させる必要がある。1.GFPをマーカーとしたTg胚の選別法について検討した。受精卵前核にCMV・β-actin/EGFP遺伝子を顕微注入し生存胚を体外培養した。4細胞ー胚盤胞期に、それぞれ蛍光顕微鏡で観察後、偽妊娠ICRマウスの子宮へ移植し、生まれたマウスについて解析した。これらの発光胚を移植したところ生まれたマウスの約42%がTgマウスと判定された。さらに、発光胚を全体で発光する胚とモザイク様発光胚にそれぞれ選別し、これらの胚を移植した実験では、前者で76.9%、後者で21.6%のTgマウスが得られた。以上の結果から、本手法が、Tg胚の選別に極めて有効であることが認められた。2.Tg家畜の利用の一つにTgブタの臓器をヒトの移植用臓器として用いるための研究が進められている。異種移植臓器はブタ血管内皮上に存在する α-galactose抗原分子のため、超急性拒絶反応によって破壊されてしまう。しかし、ブタでは、有用なES細胞株が樹立されていないため、マウスにおけるジーンターゲテイング法による遺伝子のノックアウトが不可能である。本研究では、その代替法として、α1,3-galactosyl transferease(α1,3-GTase)アンチセンス遺伝子(anti一GTase)の導入による宿主遺伝子の抑制を試みた。全身性に強力に発現するanti-GTase遺伝子をマウスに導入し、6匹のTgマウスが得られた.各Tマウスの遺伝子発現を解析したところ、アンチセンス遺伝子の発現が最も高い系統の肺臓において内在性α1,3-Galt遺伝子の発現が有意に抑制されていることが示された。そこで、その系統のTgマウスの各種組織および膜蛋白質におけるα-galactose分子を解析したところ、non-Tgマウスとの間に差を確認することができなかった。したがって、今後、アンチセンス遺伝子の構築に関しさらに工夫が必要であると考える。
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